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奇飛の追憶の過去自部隊会話ログとか過去の話とかぼちぼちと。
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23期重要会話:虚無に漂う追憶
以下はELCafe様(id:2y27)をお招きしての会話になります。
権利問題の複雑化を避ける為アイコンは当方で作成したのものに固定しております。



――――――――――――――――――――
 刻碑暦998年、4月。
 セフィドの王都からやや東に外れた場所に開かれたとある市場では
 戦時中である今日も民や傭兵達が必要な物を売り買いする姿が見られる。

 空は晴れ、暖かな日差しが人々を照らし出す穏やかな午後。
 これより紡がれるのは、そんな日に起こった出来事である。
――――――――――――――――――――

──────────────────────
いつにもまして賑やかな市場を、鼻歌混じりに見て回る少女が一人。


これで買い出しは…たぶん終わり!
何か掘り出し物とかないかなー?

見慣れた風景も、人々の往来や喧騒により、どこか新鮮にさえ思える。
それにしても今日はいつもより人が多いのは何でだろ。

ふと視線を向けた先に映る人影。
……およ?あれは……。

──────────────────────
視線の先では店主らしき人物と少年が言葉を交わしている。


その事自体は別段目を引くものでも無くありふれたものであったが、
少年は露店の内側に立ち手に持つ籠を見せながら話しており
店主に籠に入った何かを次々と渡しはじめる。

──────────────────────
渡された店主はそれを一つ一つ数を確認するように受け取り脇に置くと、

並んでいる品物を見る客を気に留める様子も無く
傍にあった袋から取り出した何かを少年へと手渡した。

──────────────────────
んん…?
何かに惹かれるように店に近づいていく。
最初は興味本位だったのかもしれない。

2人の声が聞こえるくらい近くなると、懐かしいような不思議な感覚を覚える。

( ………。)
様子を伺うように聞き耳を立てる。

──────────────────────
短いやりとりを続けた後、店主は立ち止まる客が増えたのを横目に見ると

別れを切り出す様に少年にこう告げた。
お前もその年でご苦労様だな。
また頼むよ、クラリエント
──────────────────────
( ……クラリエント? )

聞き覚えのある名前。
この世界に来て出会い、仲良くなり、何時の巡りからか聞かなくなった名前。

──────────────────────
おじさんも気をつけてよね。
クラリエントと呼ばれた少年は特に否定する事も無くそう返すと、
身を翻し近くにあった脇道へと入って行く。

──────────────────────
( 名前が同じってことはよくある話だけど… あれは… )

( 確かめなきゃ! )


…待って!
見失わないように脇道へと入る。

──────────────────────
市場の通りとは打って変わって人通りが少ないその道で

小さい背中は真っ直ぐと進んでいく。
やや距離はあるものの急ぐ様子も無く、
少し駆ければ追いつきそうな距離である。


 

 距離が近づくにつれ、疑惑は確信に変わる。
 "姿こそ小さいものの"、間違いない。間違えるはずもない。

 追いつき、呼び止め、声をかける。
 …くらりん?くらりんなの?

──────────────────────
はっ?……くらりん?
呼び止められた少年は一瞬警戒の色を見せたものの、
出て来た単語に不思議そうな顔を浮かべ確認するようにおうむ返しをした。

──────────────────────
………。
確認するように顔を覗き込む。


今までどこにいってたの?なんで小さいの?
あ、小さくなる魔法でも覚えたの?
それとももしかしてもしかしなくとも巡りの影響?
私の事覚えてる?あのくらりんと同じくらりんなの?
何から聞いていいのか整理がつかず出てきた言葉は…

ええと…ええと…くらりんだ。

──────────────────────
なすがままに顔を覗き込まれていた少年は我に返ると

キッと表情を強張らせ、距離を離す様に後ずさった。
って言うかそもそもあんた誰な訳?
人の名前だか何だか知らないけど、俺の事なら人違いだから。
警戒しているのか、ややトゲのある口調でそう返す。

──────────────────────
おー、2個同時に解決した。
ぽむっと大げさにジェスチャーする。

自己紹介がまだだったね。
私は異世界の魔王…の娘、だよ。

そしてくらりんは君のことだよ、クラリエントくん。
先程の会話が聞こえちゃってね。
これでも私は耳が良い方なのだよ、えっへん。

いつもの調子なんだか違うんだかよくわからないテンションで話し出す。

──────────────────────
……は、はあ。
相手の言葉を信じているのかいないのか、
少年は毒気を抜かれた様子で返事を返す。
えーと。それでその異世界の魔王が俺に何の用な訳?
売れそうな物も今手元にないんだけど。
──────────────────────
(掴みはばっちりね…!)

何から話したものかしら…と考えた後に口を開く。

私のお話をひとつ聞いてくれる?
そんなに時間はとらせないわ。
──────────────────────
別に聞くだけならいいけど。
変な事したら容赦しないからね。
少年は再度険しい表情を浮かべ返答する。

──────────────────────
容赦しないとどうなるか気になる!

…という冗談はおいといて。

むかーしね、セフィドを始まりの地として、
五か国で行商をしたり、見聞を広めたりしながら旅をしている部隊がいたんだ。
それがね、ある日を境にぱったりと連絡がとれなくなっちゃったの。

実はそういうことってここでは珍しいことではなくて、
日に日に忘れられていっちゃうんだって。 …怖い話でしょ?

反応を伺うように話をいったん止める。

──────────────────────
表情を変える事も無くゆっくりと話を聞いていた少年は

投げかけられた問いに口を開く。
異界から来た傭兵の話?
戦争もしてるし、それは仕方ない事なんじゃないの。

俺は知らないけど、異なる世界から来たら
帰りたいって思うのが普通だろうし。
──────────────────────
"帰りたい"…。
自分にはなかった考えに言葉を詰まらせる。

そっか…そうだよね。
普通なら…そう考えるよね。

もし帰ったのだとしたら無事に帰れたのかな。
それなら手紙の一つくらいくれてもいいのに。
あ、帰っちゃったらこっちと連絡手段ないか。
でも無事ならそれはそれで……

           ………じゃあ目の前のちびくらりんは何なのかしら……。
──────────────────────
何、あんたの知り合いの話?
少年は独り言に近い状況になっている相手にそう聞くも
返事を聞く前に視線を逸らし苦い表情を浮かべる。
……はあ。同じ名前が居るんなら変えようかな。
──────────────────────
ほんとに何も知らないの?

くらりんってその人のことであり、君の事だよ。

でも不思議なことに…君は小さくて。
私が知ってるくらりんは大人だった。
20歳ちょっとの…。

これ以上説明する術を持たないかのような自信のなさそうな受け答えになる。

──────────────────────
悪いけど、俺は異世界から来ても無いし記憶もこの年までしか無いよ。
拒絶する様に少年はそう言ったかと思うと
何かに気付いた風に真剣な面持ちで向き直った。
ねえ待って。その人そんなに俺に似てるの?
──────────────────────
生まれも育ちもこの世界なの?

(やっぱり何かがおかしい…けど、上手く言い表せない。
 うーん…うーん…。)

似てるどころか、君をそのまま大人にした感じ…といえばいいのかな。 

いつもくらりんって呼んでたから…
えーっと…えーっと…名前は確か…クラリエント・ジールタル 。
──────────────────────
ッ!丸々一緒じゃん……!
他人の名前つけるなんて何考えてんのあの人……!
少年はフルネームを聞き苦虫を噛み潰したような表情をすると
声を震わせながらそう独りごちる。
どうやら意図的に同じ名が付けられたと思っているらしい。

──────────────────────
……名前をつけられた?
ちょっとその話、詳しく聞かせてもらえないかしら。

(もしかしたら何かわかるかもしれないし)
──────────────────────
ああ……うん。
相手の投げかけにやや戸惑いながらも肯定的な返事をした少年は
ゆっくりと話し出す。
俺、訳あって家を出たんだけど。
商人として名を売る過程で家に話が伝わったら嫌だろうって……。
付けてくれたんだ、おじさんが。
出てきた人物との関係性を説明する余裕も無いのか、
段々と表情を曇らせていく少年からは断片的な言葉しか出てこない。
……お前の新しい名前だって、言ってくれたのに。
──────────────────────
…なるほど。

こんなこと聞いちゃって悪いのだけど、君の本当の名前はなんなのかしら?
なんだか他人だと思えなくて。
もちろんその名前も「おじさん」が意味あってつけてくれたのだろうけど。
──────────────────────
俺の、名前は……。
ルカール。ルカール・インリテッド。
少年はか細い声で元の名を告げる。
でも、もう。この名前は捨てたんだ。
──────────────────────
ルカール、いい名前だね。

でも、君がそう言うのならクラリエントの方で呼ぶよ?
もっとも、"くらりん"だけど。

(名付け親の「おじさん」に聞いてみるのが早いのかなぁ…?)

それにしても何でクラリエントって名付けたんだろうね?
深く考えることのない性格ゆえに、ストレートに疑問を投げかけた。

──────────────────────
問われた疑問に少年は無言のまま思案する様にゆっくりと視線を逸らすと

数拍の間をあけ相手に再度真剣な眼差しを向ける。
俺、理由は聞いてないんだ。
だから今の状況でおじさんをどうこう言うのはやめる。
はっきりとした口調でそう宣言し、言葉を続ける。
話が途中だったら悪いけど、やっぱり俺すぐ戻って聞いてくる。
──────────────────────
あ、待って!
こんな質問したのも私だし、一緒にいかせて。

この子は本当にくらりんなのだろうか。
いろんな考えを巡らせるも、答えに結びつかない。
原因を探るべく彼についていくことを提案する。

──────────────────────
分かった。ついてきて。

──────────────────────
少年は提案を飲みしっかりとした足取りで路地を歩みだしたが

数歩進んだところで突然足を止めた。

振り返り弁明する様子も無ければ
何かで道が塞がれている訳でも無い。

──────────────────────
……?

歩みを止める少年に不思議そうな顔を向ける。
小道や脇道があるとはいえ、セフィドの中でも栄えてる地区であり、
道に迷う程構造は複雑ではない、はず。

……どうしたの?くらりん。

──────────────────────
心配の声を受けた少年は相手に顔を向ける事もせず、
正面を見据えたまま口を開いた。

道が、分からない。
困った風でも慌てた風でも無く
零れ落ちる様に言葉が紡がれる。
……。どうやってここに来たの?

──────────────────────
(「おじさん」と別れたのはすぐそこだったハズ…だけど、
  なんだか様子がおかしいような…。)

さっきおじさんと別れたところ?
それともおじさんのおうちは遠いのかしら?
──────────────────────
……違う。名前を付けてくれたおじさんは、別の人で。
俺と一緒に旅して同じ宿に泊まってて。
少年は問いを受けようやく顔を向けると
悲痛な表情でそう答える。
覚えてない訳が無い。今日だってその宿からここに来たのに。
分からないはずないのに……!
──────────────────────
なるほど、あのおじさんとは別の人なのね。

続く言葉に"異変の予感"は悪い方向へと当たる。

………。
くらりん、落ち着いて?
──────────────────────
っ……。
帽子のつばを押さえ視線を下にした少年は
数回深呼吸をした後再び喋り出す。
今朝はおじさん……ランカッツさんと話して。
俺一人で、宿を出て……。
記憶を辿るように一つ一つ言うその声はやや震えている様にも聞こえる。

──────────────────────
(やっぱり様子がおかしい…。)

それまで後についていくように距離を置いていたが、
駆け寄ると宥めるように声をかける。

今朝はそのランカッツさんと話して、今ここにくらりんはいる。
それはきっと間違いないわ。

さっきのおじさんと出会う前のことでもいい。
落ち着いてゆっくり思い出して?
──────────────────────
市場に行く前は……。この道を通ったんだ。
だから、この路地から辿って行けば着ける筈なんだ。
少年はそうは言いながらも声色を明るくする事は無く、
地面を見つめながら言葉を続ける。
宿から出て通った道は覚えてるんだ。
でも、どうやってここに来たのか……。
矛盾した言葉を並べたが、嘘をついている様にも見えない。

──────────────────────
(すごく不安定な…もしかしてこれは…。)

リズが知っている"くらりん"とは違う"くらりん"。
自分が干渉したことが不安定になった原因なのか、それとも…。
とにもかくにも不安にさせないために精一杯明るく声をかける。

それならまずはこの路地を辿っていこう?
大丈夫、私がついてるから。

ね、くらりん?
──────────────────────
ううッ……。うん……。
優しい声掛けに安堵したのか、塞き止める限界だったのか
少年の頬を涙が伝う。
俺、何やってんだろ……。
自嘲めいた言葉とは裏腹に一つ、また一つと涙は零れ落ちていく。

──────────────────────
不安なら私が先にいこっか。

先程少年が示した路地を先導して歩く。
他愛もない話を交えたりしながら。
──────────────────────
うん……。
少年は涙を流しながらも彼女の後に続いてゆっくりと歩き始める。
簡素ではあるが話に対し時折相槌を入れながら進むも、
不安の色は消えそうにない。

──────────────────────
…それでね、そのくらりんによく似てるくらりんに出会ったときにね
ピンク色のうさもどきちゃんを譲り受けたんだ。
もっとも本人は「自分とは無関係なのでお好きにどうぞ」って顔してたけどー
うさぴんくって名前つけたんだ。今度連れてくるね?

相槌を求めた訳ではないが、話しかけるようにさり気なく振り返った。

 しかし、すぐそこに居た筈の少年の姿が視界に映る事は無かった。
 直前に角を曲がった訳でも無く、物音が聞こえた訳でもなければ
 周囲に何かが落ちている事も無い。

──────────────────────
…くらりん?

振り返った先には"何も無く"、呼びかけは届かない。
一つの再会のカタチは泡沫のように消えゆく。

…………。

いくつもの考えを巡らせるも、答えには結びつかない。
深く落ち込んだ後、顔をあげるとそっとその場所を後にした――。



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