奇飛の追憶の過去自部隊会話ログとか過去の話とかぼちぼちと。
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過去話:チシミアとラックとカパッサ 借金の発覚
| これから再生されるのは、カパッサがパーティに加入してから 一週間ほど経った頃の物語である。 |
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| ……今、何て言いました? 女は宿のカウンターで驚きの表情を浮かべそう聞いた。 |
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| ん?聞いてなかったのか?あいつの借金。 結構な額だったと思うが。 女の隣に座っていた男はその問いを受け淡々とそう答える。 |
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| は……はああ!? | |
| 女の叫び声が宿に響き渡ると周囲に居た者が顰めた顔で一瞥したが 特に声をかける訳でもなく各々中断された事を再開していく。 外は明るく食事をしている者も居り、どうやら昼時の様である。 |
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| 女は周囲の反応を気にする余裕もなく男に問いかける。 ちょ、ちょっと待ってください! あの人借金してるって分かってて勧誘したんですか!? どうやら話に出ている借金をしている人物とは 先日仲間にしたカパッサの事の様である。 |
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| ああ、そうだが。 何か問題でもあったか? |
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| おっ、大有りでしょう!? 何で誘う前に言ってくれなかったんですか!? |
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| 悪い。言う必要があるとは思っていなかった。 相も変わらず無表情のままそう謝罪する男からは 一片の申し訳なさも感じられない。 |
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| も、もう……!何なの……! それじゃあいつ取り立てに巻き込まれても おかしくないって事じゃない! |
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| ……今更なんだが。 お前も借金してるんだったよな?この宿に。 |
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| だから問題なんじゃない!! 借金だらけのパーティって何よ!?しかも結構な額っていくらな訳!? |
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| 額は知らないが。 何がそんなに問題なんだ? |
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| 何でそんなに平然としていられるのよ!? 食い扶持すら危うい状況でそんなメンツじゃお先真っ暗じゃない……! |
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| 周りのやつらもそんなのばかりだろう? | |
| 宿のツケと外での借金じゃ全然違うわよ! ……あ、待って。借金してる先にもよるわね。 |
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| そこへ話の男がやってくると怪訝な顔で口を開く。 お前、言ったのか。 |
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| あっ。 ちょっと借金ってどういう事ですか!?説明してください! |
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| 悪い。問題がある事だとは思わなかった。 | |
| 口止めしたはずだが聞いてなかったのか? それとも故意か。 |
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| ……あれは借金の口止めだったのか。 詰め寄られた男は平然としたまま間を置くと 何かを思い出した様にそう呟いた。 |
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| 相手の返答を受けた男は苦々しい顔を浮かべる。 お前に察する能力が無い事を失念していた俺が馬鹿だった。 |
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| 黙ってやり取りをみていた女は呆れた表情で口を開く。 口止め、してたんですね。 |
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| 当たり前だ。お前が騒ぐだろう。 | |
| 当たり前ですけど。 何というか、アナタの方がまだ話か通じそうな気がしてきました。 |
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| 俺がマシだと思うんならそれは苦労するな。 | |
| 凄く複雑ですけど、認めざるを得ないのが悲しいです。 はあ。借金に言及する気力が削がれました。 言わなかったって事は、取り立ての心配は無いと思っていいんですね? |
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| ああ、そっちでは無い。 | |
| ……そっち「では」? 女はほとほと気力が尽きていたかに見えたが、 言葉の足をとると眉を顰めそう聞き返す。 |
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| まだここは特定されてないはずだ。折を見て話す。 聞き返された男は焦る様子も見せずそう言葉を紡ぐ。 |
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| ちょ、ちょっと待ってください アナタ借金以外にも何かしてるんですか?犯罪とかじゃないですよね!? |
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| 身内の厄介ごとに巻き込まれただけだ。 最も、そいつはもう死んだが。 |
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| 死ぬほどの厄介ごとって何ですか……!? ああもう。頭が痛いです。 |
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| どう想像しようが勝手だが、ともかく俺は今からサーカスに行く。 受けられる仕事でも探しておくんだな。 そう言い残すと出入り口から出て行った。 |
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| そうして二人はその場に残され依頼を探すこととなったのだが それはまた、別の話である。 |
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過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘3
| 俺は冒険者になる気は無い。何度も言わせるな。 | |
| そっ……即答しなくたって良いじゃないですか! 少しは考えてみてくださいよ!良い話でしょう!? |
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| 太陽が注ぐ寂れた小屋の前で女の声が響き渡った。 日を改めやって来たものの、新しい提案も無下にされた様である。 女と一緒に剣士の男も来ているが、 口を挟もうとする様子は伺えない。 |
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| いい話?今の話に良いと思える点なんて無かっただろう。 | |
| サーカスの舞台で日給が出るんですよ!? しかも都合のいい時に!歩合制で! |
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| それで? | |
| 給料があれば自給自足に頼らなくていいですし、 宿の周りは交通面も良くて利便性が高いです! |
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| それだけか。 | |
| そっ……。や、宿は3食ご飯付きです! | |
| 全く持って魅力的じゃ無いな。 お前、馬鹿だろう。 |
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| ちょっ、馬鹿ってなんですか!? こっちは真剣に考えてるんですよ!? アナタも少しは真面目に考えてくださいよ! |
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| オマエは俺の今の生活を見下している様だが 俺が嫌々この生活をしてると思ってるのか? とんだお門違いだな。 |
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| みっ……!?見下してなんか無いでしょう!? 何処に見下してる要素があったんですか! |
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| 自給自足に頼る人生は嫌いか。 自炊をする事は滑稽か? |
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| え、あっ。 あのごめんなさい、そういうつもりじゃ。 |
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| じゃあどういうつもりなんだ? それはオマエの主観であって俺の立場に合ってないだろう。 馬鹿以外どう表現すればいいのか分からないな。 |
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| そ……。 女は何かを言いかけるも苦々しく口を噤んだ。 反論をしようとしたが返す言葉が見つからなかった様である。 ……ごめんなさい。考えが足りませんでした。 |
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| そもそもその条件に惹かれたとして 冒険者になる理由にはならないだろう。 とんだ空回りだな。 |
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| ぐ……。 そう、ですね……。 |
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| もう分かったな。俺は冒険者にはならない。 用件がそれだけなら帰ってくれ。 目つきの鋭い男はそう言うとチシミアの横を通り抜けようとした。 |
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| が、黙っていた男がそれを止めるように発言をした。 冒険者は依頼によっては報酬が弾む。 それはお前の糧にはならないのか? |
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| ラ、ラック? | |
| その発言に目つきの鋭い男は足を止めると 訝しげな表情をラックに向けた。 じゃあ聞くが、その弾んだ報酬を お前らは受け取った経験があるのか? |
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| 今はまだ無いが、戦力を揃えれば可能なはずだ。 お前が入ればそれに一歩近づく。そうだろ? 茶髪の男はそう返すと確認する様に女に同意を求めた。 説得をしているにも関わらず表情は無のままである。 |
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| そ、そうですね。確実に近づくと思います。 少なくとも、他の助けはいらなくなるでしょうし。 女は突如発せられた男の言葉に戸惑いながらもそう言った。 |
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| ……前衛2人だと助けが必要になるのか。 独り言の様にそう呟く男からはいつの間にか苛立ちが消えており どうやら冒険者になる話を真剣に考え始めているようである。 お前らの方針は? |
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| ほ、方針ですか?方針って何の……。 | |
| 依頼は利益が出そうな奴だけ受けてるな。 人助けは度外視だ。 |
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| ちょ、ラック!? | |
| ……無理やりパーティに入れるんだから 俺の分け前は多く見積もって当然だな? |
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| え、ああ、ええ。できる範囲で善処しますけど。 え?今の返答プラスだったんですか? |
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| うちの宿は総じてそんな奴ばかりだ。 お前が依頼を選べば助かる命も増えるだろう。 |
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| ちょ、私たちが極悪非道なみたいな言い方じゃないですか! 仕方なく見送る依頼があるってだけですよ!? こっちも生活が懸かっ……。せ、戦力が足りないせいです! |
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| つまり、俺の意見も依頼の決定や方針を左右できる訳だな? | |
| ああ。俺は一人で何かを決められる程要領が良くないからな。 チシミアの独断に頼っているとこの先躓く事もあるだろう。 お前の頭を借りれると助かる。 |
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| ……お前もそれで異論は無いか? 男は淡々と返された言葉を表情を変えず聞き終わると 同じく黙って聞いていた女に対しそう聞いた。 |
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| え、ええ。無茶な話でなければ受け入れますけど……。 え?まさか本当に仲間になってくれるんですか? |
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| サーカスの件込みでだ。嘘は無いな? | |
| えっ!あっ、ホントですか!? ちゃんと交渉してきました!嘘じゃないです! |
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| 力量も見せてないのによくその交渉が通ったな。 顔見せの日程指定は? |
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| あ、いえ。勧誘がちゃんとできるか分からなかったので その辺りはまだ何も決めてないです。 凄腕の狩人が来たら日雇いしてくれるかどうかを聞いただけで。 |
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| ……お前も、俺の腕を見ずによくもまあそんな事が言えたな。 | |
| こっ、こっちだって必死だったんですよ! ……え、ラックからそう聞いたんですけどまさか違うんですか? |
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| それを当人に聞くか? ベストは尽くすが、駄目だったらこの話は無しだな。 |
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| ぐっ……。 た、頼みますよ!困るんですから! |
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| 数日中にお前らの宿に出向く。 それまでに日程と内容を聞いておけ。 とんでもない交渉をしたオマエなら楽勝だな? |
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| とっ。それ、褒め言葉として受け取っていいんですよね? それぐらいなら朝飯前です。 |
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| 別にどう取ろうが構わないが。宿の名前は? | |
| 奇飛亭だ。依頼で宿を空けてる事もあるかもしれないが、 受けるのを止める訳にも行かないからな。 その時は待ってもらえると助かる。 |
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| 分かった。他には特に無いか? | |
| あ。 女は疑問を受けると しまったと言わんばかりの焦りの色を浮かべながら短く声を上げた。 |
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| 何だ。 | |
| いえ、あの。言い忘れてたなって思って。 些細な事だと思うんですけど……。 そう言いながら女の視線は空を彷徨っており 見るからに動揺している様子である。 |
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| 明らかに些細な事じゃ無さそうな言い振りだな? | |
| そ、いや。さ、最悪割り振りを変えれば大丈夫ですよね。 背に腹はかえられないですし。 |
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| 割り振り?何の話だ。 | |
| ああ、部屋の事か。あいにく空きが無くてな。 3人で2部屋を使わなきゃならないんだがいいか? |
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| ああ、そんな事か。 部屋を見てみないことには何とも言えないが、問題ない。 |
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| ほ、ホントですか!ああ良かったです。 ええと、それ以外に伝え漏れは無いはずです。 というか、本当に良いんですか?冒険者になるの。 散々勧誘しておいて何なんですけど。 |
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| ああ、気が変わった。前言撤回する。 | |
| そ、そうですか。イマイチ理由が分からないですけど、 それじゃあ宜しくお願いします。 あ、自己紹介まだでしたっけ。チシミア・パンクルエルです。 |
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| 改めて言うが俺はラックだ。苗字は必要あるか? | |
| ひとまず合否判定の間だけだ、無駄に情報を教える必要は無いな。 俺はカパッサ。話が終わったならひとまず帰ってくれるか。 |
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| ……ちょっと言葉が変わるだけで随分印象が違いますね。 何と言うか、普通に会話ができそうで安心しました。 日程と内容の話を聞いて待ってますね、カパッサさん。 |
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| あまり馴れ馴れしくされても困るが。 精々期待しておくんだな。 男はそう言い放つと先ほど向かおうとしていた山ではなく 小屋の中へと消えていった。 |
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| 消え行く男をその場で見届けた女は 帰路へと足を向け嬉しそうに笑みを浮かべた。 ふふ、これで仲間を一人確保! 途中完全に駄目かと思ったけど、ラックに助けられました。 手を思いついてたなら言ってくれても良かったのに。 |
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| 女の後を追い横に並んだ男は言葉を受けやや不思議そうな顔をした。 ん?いや、特に考えてた訳じゃ無かったからな。 まさか説得できるとは思ってなかった。 |
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| え、またまた。 知り合いだから考え方が分かったんでしょう? |
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| そこまであいつの事を理解している訳じゃないんだが。 まあ、あの腕なら合格するだろう。 メンバーが増えて良かったな。 |
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| ……あのラック。 今更なんだけど。カパッサとは面識が深いのよ、ね? 一抹の不安を覚えたのか バンダナの女はやや焦りながらそう確認した。 |
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| そして男はそれを的中させる様にあっけらかんとこう述べる。 いや?片手で数えられる程度しか会っていないが。 それがどうかしたか? |
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| え、えええ!? ちょっ、ええ!?あの人の勧めで冒険者になったんじゃ無いの!? |
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| それは事実だが。何か問題でもあったか? | |
| え、いや、ええ……!? ちょっ、じゃあ弓の腕は……あっ、やっぱりいい!聞きたくない! |
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| そうか?それなら良いが。 | |
| こっ、こっちは良くないわよ……! 不安材料だらけじゃない!聞くんじゃなかった……! |
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| そうか。悪かった。 | |
| 気持ちのこもってない謝罪はいらないわよ! ああもう!早く宿に帰って依頼探さなきゃ……! |
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| ああ、そうだな。走るか。 男はそう言うと返事も聞かずに走り始めた。 |
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| えっ!?あっちょっ、ラック!? ちょっ。もーーー!!何なのーー!? 女は叫んだものの男は既に呼び止められる距離には無く 後を追うように走って行った。 |
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| その後無事カパッサは合格を得て仲間入りする事になるのだが それはまた、別の話である。 |
過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘2
| 帰れ。俺は冒険者になる気は無い。 | |
| ……。 | |
| 山にほど近い寂れた小屋の前で チシミアは目の前の男の発言に言葉を詰まらせていた。 時刻は昼を過ぎ、地面を太陽が照らしている。 |
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| 横に居たラックに対し、チシミアが小声で話しかける。 ちょっと何なんですかこの人。取り付く島も無いじゃないですか。 |
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| ああ。こうなるとは思ったが。 焦る女とは対照的に、男はあっけらかんとそう返した。 |
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| ……。 女はラックに対して心底呆れた様な眼差しを向けた。 どうやらここまで勝算が薄いとは思っていなかった様である。 |
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| 用がそれだけなら帰ってくれ。 目つきの鋭い男はそう言うと、 二人の横をすり抜け山へと消えていった。 |
|
| あ……。 女は去っていく男を呼び止めも追いかけもせず、 ただその場に立ち尽くし見送ることしかできなかった。 |
|
| どうする。諦めて帰るか? | |
| あの人……カパッサ、でしたっけ。 あんな無愛想でも弓の実力はあるのよね? |
|
| ああ。それは間違いないな。 | |
| ならここで引き下がるのは惜しいし、 何とかして仲間に引き入れないと。 |
|
| 女はそう言うとその場に立ち尽くしたまま思案しはじめた。 考えてきた案が通らなかった為、他の策を練ろうとしているらしい。 |
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| ……うちの宿の近くに移動式でないサーカスがあったわよね? | |
| ああ、そういえばあるな。行った事は無いが。 それがどうかしたか? |
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| ひとまず今日は帰ってそっちと掛け合ってみましょ。 強引な誘いは印象を悪くするだけだし、 これ以上ここに居ても得るものはないわ。 |
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| そうか。分かった。 | |
| 二人は小屋を後にしその後サーカスに赴いたのだが それはまた、別の話である。 |
過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘1
| これから再生されるのは、チシミアとラックがパーティを組んでから 三週間ほど経った頃の物語である。 |
|
| ううん……。 やっぱりパーティとしての新メンバーを入れないと どうにも割に合わない……。 |
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| いつもの宿のテーブルでチシミアは硬貨を見つめながらそう言った。 テーブルには硬貨がいくつかあり、依頼の報酬を分け終えた後のようである。 外はまだ明るく、周囲で談笑している冒険者も多い。 |
|
| 助っ人とメンバーとでそんなに差があるのか? 能力は申し分無いと思うが。 |
|
| 報酬の分け方が変わるの。 こっちのお願いで他から引き抜いてるから 多めに見積もらないといけないじゃない。 それに依頼で助っ人に何かあったらその責任は私達に降りかかるのよ? |
|
| 頼んでるのは後ろで戦う魔法使いやヒーラーだろ? 大きな依頼でも無い限りそこまでの危険性は無いんじゃないのか? |
|
| だから大きな依頼が受けられないんじゃない! メンバーをもっと増やしていい依頼を受けたいのに 相変わらず部屋は空きが出ないし、宿を動く訳にもいかないし……。 |
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| 思ったんだが。別に一人一部屋じゃなくても良くないか? 俺は別に床で寝るので構わないし、そうしてる所もあるだろ。 そういう条件で良いって奴を誘えばいいんじゃないのか。 |
|
| 簡単に言うわね。アテでもあるの? 他の宿からの引き抜きはそう上手くいかないわよ? |
|
| アテか……。 そう言い、男は考え込むように口を閉ざした。 |
|
| この際私達みたいな前衛じゃなければ何でもいいわ。 シーフでもアーチャーでも。欲を言えば回復もできる人がいいけど。 |
|
| ああ、弓か。 そう言えば狩人だったなあいつ。 |
|
| 何、居るの!?この近く!?期待はできる!? | |
| 期待できるかは分からないが、俺に冒険者を勧めた奴だ。 変わってなければ正規の職にはついていないハズだな。 半日もあれば着く。 |
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| 半日……。今からじゃ遅くなるわね。 じゃあ明日朝一番で行きましょう。 |
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| ああ、俺は構わないが。 | |
| じゃあ決まりね。 上手い誘い文句を考えておかなきゃ。 女はそう言うと硬貨をしまいウキウキとその場を後にした。 |
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| ……。 相も変わらず無表情の男が女を見送りながら何を思っていたのかは 傍から伺い知る事はできそうになかった。 |
過去話:チシミアとラック 出会い
| これから再生されるのは、チシミアが男と別れてから 十数ヶ月経った頃に始まる物語である。 |
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| 親父さああん。私もうどおしたらいいのおお。 女が宿のカウンターに突っ伏している。 手に握られたグラスから察するに、既にできあがっている様である。 |
|
| おまえな、そんなんだから 他のテーブルから追い出されるんだぞ。 宿の亭主と見られる男は、諭すようにそう言った。 |
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| 見ると周りのテーブルでは他の冒険者がドンチャン騒ぎをしており 従業員と見られる女性が料理を運ぶ姿も見られる。 夜も更け、依頼遂行祝いの宴会をしているようだ。 |
|
| 私だけパーティに入れてもらえない……。 剣も覚えた、知識も増えたのに。 なのに何で私はパーティに入れてもらえないのお!? |
|
| 依頼には誘ってもらえてるじゃないか。 お前だってそれで食っていけてるだろう。 |
|
| 穴埋めで入れられるだけでパーティに入れてもらえないの! 私はパーティが欲しいのよ!仲間が欲しいの! |
|
| 今は宿の仲間で満足しておけ。 どこもお前が入る隙間なんぞ無いんだよ。 |
|
| うぅ、うぅう……。 女は涙を浮べ口を噤むと、グラスに残った酒をちびちびと飲み始めた。 |
|
| |
二人が会話を終えると、剣を携えた一人の男が入って来た。 焦っていない所を見るに、依頼主ではなさそうである。 |
| なんだ、見かけない顔だな。よその冒険者か? | |
| いや、冒険者になりにきたんだが。 ここの宿は空いているか? |
|
| ああ、丁度昨日一部屋空いたな。 しかし悪いがパーティの方に空きが無いんでな。 まあそれでもいいってんならいいが。どうする? |
|
| ああ、それで構わない。 ラック・トーデリだ。宜しく頼む。 |
|
| じゃあこいつにサインを……おっと、あっちに持っていってたんだったか。 悪いが少しこいつの相手でもして待っててくれ。 亭主は女にではなく来たばかりの男に対してそう言い、奥に消えていった。 |
|
| ……あんた、冒険者になるの? | |
| ああ。勧められたんでな。 | |
| 冒険者になる事を勧めるなんて、とんでもない人ね。 冒険者は最悪よ。私が保証するわ。 |
|
| そうなのか? じゃあ、あんたは何でやってるんだ。 |
|
| 借金返すまで離れられないのよ。滑稽でしょ。 しかもそれ私の借金じゃないの。意味分からない。 |
|
| そうなのか。それは災難だな。 男は同情や嘲笑と言った感情は乗せずに、ただそう言った。 |
|
| が、生憎酔った女はそうは受け取らなかった。 あんた、馬鹿にしてるの?馬鹿にしてるんでしょ! |
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| 悪い、そんなつもりは無かったんだが。 激昂する女に驚きもせず、男は淡々と言葉を紡いだ。 |
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| もうっ!どおおせ私は誰からもパーティに入れてもらえない 馬鹿で使えない滑稽な女よっ! |
|
| 自分でそこまで言うのか。 | |
| あんただってそう思ってんでしょ!馬鹿にしてんでしょ! | |
| ……ん? じゃああんたは誰とも組んでないのか? |
|
| だーかーらー! 私は一人なのよ!ハブりなの! どうせ誰も相手にしてくれないんですよーだ! |
|
| あんた名前は? | |
| チシミアよ。何?仲間になる気にでもなったの? | |
| ああ。あんたが良ければだが。 | |
| と、そこで亭主が戻ってきた。歩調は遅く、特に急いで来た様子もない。 悪い悪い、持ってきたぞ。 これにサインしてくれ。 |
|
| はあああああああ!? あんた正気なの!? |
|
| ……なんだ、何があったんだ? | |
| 駄目か。 | |
| いっ、良いに決まってんじゃない……! | |
| 何だ、酔っ払いの戯言か? | |
| パーティを組む事にした。 | |
| パーティ!パーティですって!私がパーティ! | |
| お前、よくこの状態でこいつを仲間にしようと思ったな……。 | |
| 何か問題があるのか? | |
| いや、まあ悪くは無いが……。 酔いの席での決め事なんざ、嘘みたいなもんさ。 明日になってからもう一度確認するんだな。 |
|
| 分かった。 | |
| パーティ!パーティ!私がパーティ! | |
| 翌朝我に返ったチシミアとラックの長きに渡るやり取りがあったのだが それはまた、別の話である。 |
過去話:チシミア 唐突な別れ
| これから再生されるのは、ここにいる彼らが飛ばされる前の 遥か昔の物語である。 |
|
| ちょっと!どういう事!? | |
| どうもこうもねえよ。離せ。 | |
| ……。 | |
|
宿から出ようとしている男を女が必死に止めており、 |
|
| ねえ!嘘でしょう!? 何で私を置いて出て行こうとしてるの!? |
|
| お前が邪魔になったからに決まってんだろうが。 | |
| ね、ねえ。私何かした? 昨日まであんなに優しかったじゃない。 |
|
| もうオマエとの恋人ごっこには飽き飽きなんだよ。 つうか、元からタイプじゃねえし。 |
|
| 恋人……「ごっこ」? | |
| 交渉とか値切りとかちょっと使えるから置いといてやろうかと思ったのに 一向に武器を握る気配はねーわ結婚の話出すわもうウンザリだよ。 |
|
| ちょ、ちょっと待って!結婚を急かしたつもりは無いわ! いつかそうなったら良いってだけの話じゃない! |
|
| 俺はそうなりたいとは思ってないんだよ。 つうか定住して結婚ってオマエ冒険者なめてんだろ? 定住できるんだったら冒険者なんて底辺とっくにやめてるっつうの。 |
|
| あ、あなたの機嫌を損ねたのなら悪かったわ。 何でも言う事聞くし武器だって使えるようになるから! だから置いていくなんて酷い事はしないで!お願いよ! |
|
| オマエほんと人の話聞かねえな。タイプじゃねえっつっただろ。 俺はもう他の女に乗り換えたいんだよ。オマエは用済み。 つか俺から出て行くんだからちったあ有り難く思えよ。 |
|
| よっ……! じゃ、じゃあ今までのは全部嘘だったって言うの!? |
|
| 当たり前だろオマエバカか? 暮らしに不自由してねえのに冒険者と駆け落ちするようなバカと 一生を添い遂げたいと思う訳ねえだろ。 対した美人でもねーし胸もねーしよ。 |
|
| な、なっ……!? 女はわなわなと震えはじめた。 釣りあがる眉から察するに、それは怒りからくるもののようである。 |
|
| あ、あなただって対したものしてないじゃない! 大体あなたがあんな風に声を掛けてこなければ 駆け落ちなんてしなかったわよ! 私勘当されてるのよ!?この先どうしてくれるの! |
|
| 駆け落ちまでするなんて普通思わねーだろ。滑稽だな。 つうか、俺への恋が冷めたんならとっとと離してくんねえか。 それともまだ俺と関係を続けたいっつうのか? |
|
| だれがあんたみたいな最低な男なんかと! もう出て行って!! |
|
| あーあーそうかいそうかい。 じゃせいぜいこの先頑張るんだな。 そう言い、男はイラついた様子で宿を後にした。 |
|
| ……はあっもう何なの!親父さん、昼食ください! 男を見送った女は怒りが収まらぬ様子でカウンター席に座りそう言った。 |
|
| そして事を静観していた宿の亭主は 女に同情するようにこう言うのである。 あいつのツケは、お前が払うんだな。 宿代も大分滞納してたしなあ。ま、頑張るんだな。 |
|
| ……は? ……はああああ!? |
|
| そこから女は稼ぐために武器を習得し幾度となく戦闘をこなすのだが それはまた、別の話である。 |
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