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聖国の一角。天幕の外に一人の女の姿がある。 |
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| そこに剣を携えた男がゆっくり現れると 女の前で歩みを止める。 |
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| 女は男に目線を向けると相手の顔を見て溜息をつく。 その様子だと今日も収穫は無かったのね。 |
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| ああ。時間が経ったから一度戻って来たんだが もう一度探してきた方がいいか。 落胆の色を見せる相手に悲しむ様子も無く、男は淡々とそう聞く。 |
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| いいわ。そろそろ限界よ。 明日此処を発つのだから、あなたも準備をして頂戴。 |
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| そうか。 | |
| そこへ別の男が慌てた様子でやってくると元居た男へ声を掛ける おい!手を貸せ! |
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| その発言に、ローブの女は顔をしかめる。 あなた、まさか……。 |
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| クラリエントが見つかった!早くしろ! | |
| ―――! | |
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一つの天幕の中に、複数の男女の姿がある。 |
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| そこへバンダナをつけた女が現れ静寂を打ち破る。 クラリエントさん見つかったんですか!? |
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| 放たれた大声にローブの女はゆっくり顔を向けると 怪訝な顔をする事も無く問いに答える。 そこの斜面に落ちてたそうよ。 死んではいないみたいだけれど。 |
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| そうですか……。 これでようやく皇国に行けそうですね。 |
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| 安堵する相手にローブの女は肯定も否定もせず、 神妙な顔で横たわる男へと視線を戻す。 |
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| このまま起きなかったらどうするんだ? 担いでいくのは無理があるだろう。 |
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| 投げかけられた問いに別の男が答える。 部隊の登録は3人だ。こいつがまともに動きそうに無い以上、 それ以外で決めて先に行けばいい。 |
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| リーダーはどうするんですか? ラック、腕はもう大丈夫なの? |
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| ああ。また切り落とさなければ大丈夫だ。 男は心配する相手に真顔でそう答える。 |
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| 全然笑えないわよ、それ。 ええと。それじゃあ4人の中から決めれば良いって事ですよね。 |
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| 進む話に水を差す様に、ローブの女が口を開く。 リーダーは私がやるわ。 |
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| 突然の発言にバンダナの女は目を見開くと、暫しの間を開けてから言葉を発した。 "やる" って。 シリールさん、魔力が……。 |
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| 戸惑う周囲の顔を見て視線を落としたローブの女は 苦い表情を浮かべながら言葉を返す。 戻ったの。昨日確認したわ。 理由は分からないけれど、戦線に立つなら今でしょう。 |
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| バンダナの女は説明する相手に尚も困惑の色を隠せず 女の顔を覗き込むようにしながら問いかける。 そ、そんな急に戻ったものを信じて良いんですか? そんなまた、いつ無くなるかもしれないものを……。 |
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| 信じられないのはラックの腕だって同じだ。 女がやりとりをする中、目つきの悪い男が吐き捨てる様にそう言う。 この世界にいる以上、訳の分からない事象に振り回されるのはもう避けようが無い。 俺やお前の腕だっていつ落ちるとも限らないこの状況で、 いちいち突っかかってたらキリがないだろう。 |
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陽の光が差す中、天幕の外に1人の男の姿がある。 |
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| そこへ1つの天幕から目つきの鋭い男がやってくると 元居た男にそのまま声を掛ける。 おい。面を貸せ。 |
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| 見張りをしていた男は声の相手に顔を向けながら 手記を閉じにこやかに口を開く。 ラックは寝ているかと思いますが、 どなたか代わりをしてくださるのですか? |
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| 目つきの悪い男は返事を聞くのもそこそこに相手の横へと座り込んだ。 ここで話せば済む事だ。代わりは必要ない。 |
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| 貴方が話を申し出るとは珍しいですね。 何か気になる事でもあるのですか? |
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| 一人になるのを避けておいてよくもまあそんな事が言えるな。 俺が声を掛けなかったら話さないつもりだろうが、 あいにく俺はそう甘くない。 |
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| おやおや。これは参りましたね。 何がお望みなんですか? とげとげしい物言いの相手に動揺する事も無く 金髪の男はおどけた様子でそう問いを投げる。 |
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| お前、ここから離れるつもりだろう。 鋭い目つきの男はおどける相手に表情一つ変えず 真顔でそう言い放った。 |
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| 放たれた言葉を受けた男は顔色こそ変えなかったものの すぐに返事をする事は出来ず、言葉を詰まらせる。 |
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| 茶髪の男は相手の言葉を待つ事は無く、目を合わせたまま追及を続ける。 あれだけラックと個別に話して気付かない程バカだと思われてるんなら 俺も随分と見くびられたもんだと言いたい所だが、 功績も放棄する程切羽詰まってる以上お前の手落ちなんだろうな。 男は怒りや悲しみといった感情も乗せず、吐き捨てる様に言葉を紡ぐ。 そう先の話にも見えないが、お前は言うつもりも無いんだろう。 随分と勝手な事だ。 |
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| 一方的に言葉を聞かされた男は怯む事も無く、 口元に笑みを湛えるとやや間を開けて言葉を返す。 それで、貴方はどうするのです? 私の代わりに言ってくださるおつもりなのですか。 それとも、引き留めてくださるのでしょうか。 |
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| 茶髪の男は落ち着きはらう相手に対して特に苛立つ事も無く、 やや目を細めて悪態を続ける。 ふん。急に消えられたら誹る事も出来ないだろう。 言える内に言っておかないと気が済まないから言ったまでで それ以上の意味を探られても不快なだけだな。 |
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| そうですか。心残りが解消されたのなら それ程良い事はありませんね。 特に感慨深いと言った様子も無く、 金髪の男はとってつけたようにそう言う。 |
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| 一人の男が天幕の中で腰を下ろし手紙を読んでいる。 その表情はやや固く、あまり楽しい雰囲気の内容では無さそうである。 |
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| そこにローブを来た女がやってくると 訝しげな顔で中に居た男に声を掛けた。 貴方は何を狙っているの。 |
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| おや、何の事でしょうか。 声を掛けられた男は問いを受け顔を上げると にこやかな笑みを浮かべる。 聖国も以前居た時とは大分様変わりしましたね。 私にも大戦参加の願いが出るとは嘆かわしいですが、 これはいっそ評価されたと喜ぶべきでしょうかね。 |
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| 相手の呑気とも言える返答に苛立ったのか 女はより一層険しい表情に変わる。 評価の時期なんてとっくに分かっていた筈だわ。 貴方、自分から出る様にしたでしょう。 |
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| おや、そう思われますか? 仮にそうだとして、何か問題でもあるのでしょうか。 |
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| 名前と顔を売る為でしょう。 それが何を意味するのか、私に分からないと思っているのなら大きな間違いだわ。 |
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| ええ、ええ。勿論貴女の頭の良さは存じております。 ですからこうして策を打っているのですよ。何かおかしいですか? |
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| ……最後まで弱音を吐くつもりは無いのね。 後で絶対に悔やむ事になるわよ。 |
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| " 悔める時があるのなら " それ程嬉しい事はありません。 私にも私なりのプライドというものがありますので、 ご理解いただければ幸いですよ。 |
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| 私達はそれでいいけれど、チシミアはそうはいかないでしょう。 そのお守りまでさせる気なのかしら貴方は。 |
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| 彼女にお守りが必要ですか? 多少放っておいても何とか出来るかと思いますが。 どちらにせよ私が気を利かせる問題とは思えませんし、 私が言わないからといって貴女が言うつもりも無いのでしょう? |
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| わざわざババを引くつもりは無いわ。当たり前でしょう。 それより最低限の指示はして貰わないと困るわ。 それぐらいの責任は当然取ってくれるんでしょうね。 |
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| ええ、勿論です。その辺りはむしろしない方が恐ろしいですから キッチリやらせていただきますよ。 次は皇国、その後は聖国へ。 その辺りの話はまた皆さんがいる中で致しますよ。 |
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| 淡々と話す男の返事を聞き 目を逸らしたローブの女は苦々しい顔を浮かべる。 気に入らないわ。 |
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| トゲのある言葉を投げかけられた男は一瞬真顔になったが すぐにおどけた様に笑みを見せる。 その様な評価を貴女からいただくのは初めてですね。 ここに来て貴重な体験ができるとは思いもしませんでした。 |
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| 本当に、気に入らない……! ローブの女は震えた声でそう言うと 返事も聞かずに身を翻し天幕の外へと去って行った。 |
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去り行く相手を見届けた男は途端に弱々しい表情になると |
反映会話2:手土産/饅頭 サマロ シリール
| 一つの天幕の中に一人の少女の姿がある。 少女は地面に座り、目の前にある箱を手にも取らずまじまじと見つめている。 |
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| そこにローブを来た女がやって来ると元居た少女を一瞥し、 荷物の方へ向かいつつ声を投げかける。 それは食べても大丈夫よ。 クラリエントがさっき受け取ったと言っていたから。 |
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| 掛けられた声に少女はハッと顔を上げ、相手に視線を向ける。 あ。お土産、ですか。 |
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問いを受けた女は荷物に伸ばした手を止め少女に視線を向ける。 |
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| 白い……もふもふさん……。 思い当たる人物がいるのかいないのか、少女は頷きながらそう呟く。 |
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| ローブの女は頷く相手から目を逸らし荷物の中から複数の物を手に取ると 思案する様に視線を動かした後、そのままの姿勢で再び口を開く。 ねえ。あなたは平和な生活が出来ると言ったら、それを望むかしら。 |
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| 平和な生活、ですか。 箱に視線を戻していた少女は声を受け相手に顔を向けると 意味を考える様にオウム返しをする。 |
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| ローブの女は振り向く事はせず、無言で相手の言葉を待っている。 緊張しているのか、物を持つ手に力を込めた様にも見える。 |
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| 皆で、出来るなら。とても良いと思います。 だけど、私、1人なら。いらないです。 暫し考え込んだ末に、少女は決意する様にそう答える。 |
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| ローブの女は返答を聞き目を見開くと、 神妙な面持ちで少女へと向き直った。 貴女以外の誰かの記憶が無くなったら、耐えられるかしら。 |
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| 少女は続けて投げられた問いに、今度は然程時間を掛けず口を開く。 頑張り、ます。 |
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| それは、頑張らなければ耐えられないという事かしら。 | |
| えっと。頑張って、支えます。 | |
| 少女の答えが意外なものだったのか、 ローブの女は驚いた表情で言葉を詰まらせる。 |
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| 少女は黙る相手にまだ伝わっていないと思ったのか説明を続ける。 その。強くなったので。一人でも、戦えます。 もっと、役にたてます。強くなります。 |
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| そう。そうね。本当に、強くなったのね。 たどたどしくも心を込めて力説する少女に ローブの女も言葉を噛みしめる様に切なげな表情でそう返す。 |
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| シリールさんは。不安ですか。 | |
| きっとそういう事だわ。何しろ貴女に理由を押し付けようとしたのだから。 自覚が無いのは恐ろしい事ね。 そう吐露する女の表情は、今にも泣きそうに見える。 |
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| 少女は相手の様子を見ると立ち上がり相手の目の前へ駆け寄る。 頼りに、なります。みんな、仲間です。 一人じゃ、無いです。 |
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| そうね。そうだわ。 弱音を吐かないのは私も一緒なんだわ。笑ってしまうわね。 言葉とは裏腹に、その頬には1つ、2つと涙が伝ってゆく。 |
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| 少女は物を持つ相手の手をそっと包み優しく声を掛ける。 大丈夫、です。ずっと、これからも。 一緒に居れば、大丈夫です。 |
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| ええ、そうね。本当にばかばかしいわ。 ありがとう、サマロ……。 |
| 日は変わり、天幕の外に一人の男が立っている。 空は青く地面は照らされており、男は見張りをしている様である。 |
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| そこへ1つの天幕から剣を携えた男が現れると 元居た男に声を掛けた。 交代だ。シリールが呼んでたぞ。 |
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| っ──! 目つきの悪い男は掛けられた声には答えず 何かを見ていたかと思うと一目散に走っていく。 |
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| 向かった先には悩む様にこちらへ向かう 1人の男が見える。 |
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| 男は向かって来る相手を見ると 息をのむ様に歩みを止めた。 |
走って行った男はそのままの勢いで相手の胸倉に掴みかかった。
今まで何処ほっつき歩いてたんだお前は!!
巡りから何日経ったと思ってるんだ!?
| 怒鳴られた男は抵抗する事無く顔を歪め目を逸らす。 すみません……。 何の言い訳も、出来ません。 |
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| 弱々しい言葉を聞いた男は舌打ちをすると 更に表情を険しくしながら突き放す様に手を離した。 どれだけ迷惑を掛けたら気が済むんだ! お前の代わりは居ないんだぞ!? |
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| 申し訳、ありません。 金髪の男は畳み掛ける様に怒号を浴び苦渋の色を濃くするも 目は合わせず言葉を噛みしめる様に返答する。 |
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そこへ剣を携えた男がやってくると金髪の男へと声を掛ける。 |
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| 金髪の男はその声に顔を上げると目を見開き 男の一点に視線を止めた。 あなた……腕は……。 |
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| 巡りを越えたらこうなった。 戦場に出るのは止められたが。 |
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| そう、ですか……。 返答を聞いた男は安堵する事も無く 視線を彷徨わせ一層動揺する様子を見せる。 |
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| おい、お前── | |
| クラリエントさん!? 目つきの鋭い男が何かを言いかけると 天幕とは反対の方から現れた女が声をあげた。 |
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| 声を遮られた男は女を見て軽く舌打ちをすると 口を閉じる相手の様子を伺う。 |
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| もう戻ったのか。 | |
| えっ、あっ。 私戻って変えてきます! 女は一人その場でうろたえると 返事を待たずに身を翻し走り去って行く。 |
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| あっ、おい!……チッ。 目つきの鋭い男は去る女を止める様に一歩身体を出したが追う事はせず その場でまた一つ小さな舌打ちをした。 |
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| 去っていく女をゆっくり見ていた男は落ち着いた様子で口を開く。 とりあえずシリール達に伝えた方が良くないか。 |
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| 金髪の男は未だ沈んだ顔をしており 問いかけに対して応じる様子も見えない。 |
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| チッ。その面どうにかしてから来いよ。 浮かない顔を消さない男を見て再度舌打ちをした男は 苛立つようにそう吐き捨て天幕へと走って行く。 |
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| 去っていく相手の足音が遠くなると 金髪の男はようやく口を開いた。 申し訳ありません。ラック……。 他の皆さんは居るのですね? |
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| ああ。来なかったのはお前だけだ。 また覚えてなかったんだな? 剣を携えた男は重い空気を纏う相手とは対照的に酷く軽い調子でそう答える。 |
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| もう、次は無いかもしれません。 金髪の男は相手の声のトーンは気にも留めず 地面を見つめながらそう答えた。 |
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| 金髪の男は問いを受けるも即答出来ず、 地を見つめたまま思案し始める。 |
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| シリールはお前の異変に気付いてるだろう。 あいつを頼るのはダメなのか。 |
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| いえ……。彼女は何と? | |
| お前が来ない前提で進めるべきだって言ってたな。 チシミアが反発してたが。 |
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| そうですか……。 いえ、そうでしょうね……。 |
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| 出来るのか、リーダー。 チシミアを止めるなら追うが。 |
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| ああ、そういう事でしたか。さっきのは。 金髪の男は言葉を聞き相手を見ると 少し間を置きまた口を開く。 巡りの数の事はもう? |
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| ああ、聞いた。3つ飛ばしたらしいな。 俺の腕と関係あるのか知らないが。 |
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| そうですか……。 相手の返答を聞いた男はまた視線を逸らし口を閉じるも その顔にもう動揺は見えない。 |
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| 天幕に戻るか? | |
| ええ、そうですね。 来期以降の事は追って話します。 |
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| 分かった。 記憶の統合はどうするんだ。覚えてないんだろう。 |
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| いえ、メモが残っていたのでそちらは何とか。 何かあった時は頼みます。 |
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| そうか。分かった。 | |
| こうなったらもう腹をくくるしかありませんので、 あなたにも多少動いてもらう事にはなりますが。 |
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| 問題ない。戦場に出てもいいくらいなんだが、それは止められたからな。 俺はお前に従うだけだ。 |
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| 死ぬのと、どちらがマシなのでしょうね。 | |
| 生き返るんじゃないのか? 今回は右腕だけだからかもしれないが。 |
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| とんちんかんな返しをする相手に 金髪の男はたまらず顔を綻ばせる。 ふっ、ふふふ……。それ、真面目に言っているのですよね。 いえ、聞かなくても分かるのですが。 |
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| 何かおかしかったか。 茶髪の男は笑い出す男を見ても相も変わらぬ無表情を貫きながら そう短く言葉を発する。 |
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| いえ。あなたは変わりませんね。 どうかそのままで居て下されば幸いですよ。 |
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| そうか。 何か助けになったのなら言ったかいがあった。 |
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| ふふ……。あまり遅くするとカパッサに怒られますね。 急ぎましょう。 |
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| ああ。そうだな。 |
| 聖国の外れ、とある小さな天幕に複数の人の姿が見える。 隙間から光が差し込む事は無く、人の数に反して辺りは静寂に包まれている。 |
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| 静かな空気を断ち切る様に、バンダナを付けた女が口を開いた。 クラリエントさん、本当に来ないですね。 聖国以外まで飛ばされちゃったんですかね。 |
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| どうかしら。 何にせよ今日の内の合流は望めないでしょうね。 向かいに座っていたローブの女がそれに対しゆっくりと応える。 苛立つ事も無ければ不安の色も無く、あまり関心が無いようにも見える。 |
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| 返答を聞いた女は口を閉ざしたかと思うと 今度は隣にいる男に声をかける。 というか、本当に大丈夫なのその腕は。 |
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| ああ。元通りだな。 これなら剣を振るのも問題無いだろう。 問いを受けた男は右腕を試す様に動かしながら淡々とした口調でそう答える。 |
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| 巡りのお陰なんですかね? 喜んで良いのかちょっと分からないけど……。 |
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| 原因が分からない以上、戦場に出るのは避けた方が良さそうね。 今回は3人に任せる事になるけどいいかしら。 |
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| え?3人ですか? ラックとシリールさんを抜いたら4人でしょう? |
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| 確かに私とラックを引けば4人だけれど。 今の状況じゃもう1人引かなければならないでしょう。 |
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| バンダナの女は相手の言葉を聞き眉をひそめる。 もしかしなくてもそれ、 クラリエントさんの事を言ってるんですか? |
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| 怪訝な表情をする相手に臆する事無くローブの女は話し続ける。 そうよ。もしかしなくても彼しか居ないわ。 ここに来ていない時点で彼をアテにするのはおかしいと思うけれど。 |
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| やや高圧的な女の態度にバンダナの女は更に顔をしかめる。 ちょっと待ってください。 シリールさん、クラリエントさんが来ないと思ってるんですか? |
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| 近くにいる男はどんどん雲行きが怪しくなる会話に気づいていないのか はたまた気付かないフリをしているのか、真顔のままその場で沈黙を続ける。 |
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| 来ないかどうかは分からないけれど。 聖国は久しぶりなのだから、早めに動かないと首を絞められる事になるわよ。 ローブの女は語気を強める相手とは対照的に間を置きながらそう返す。 |
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| それは分かりますけど、せめて2日くらい待ってもいいじゃないですか。 前回だってちょっと離れた所に居たみたいですし、 それくらい待ってからでも遅くないでしょう? 苛立ち始めたバンダナの女はどんどん早口になっていく。 |
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| ローブの女はヒートアップしていく相手につられる様に語気を強めた。 それで来なかったら一体どうするつもりなのかしら。 先に決めておいて後から調整する方が賢明だわ。貴女だって分かるでしょう。 |
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| 来なかったらって、シリールさんそれ本気で言ってるんですか!? 確かに前の終わりはあんまりでしたけど、 勝手に見放すほど責任感の無い人じゃ無いですよ! |
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| 大きくなった会話に反応したのか、隅で寝ている少女が寝返りを打つ。 動きはしたが起きる様子はなく、単に寝相の様だ。 |
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| 少女を見たバンダナの女は声を落としバツが悪そうに口を開く。 とにかく、クラリエントさんが来ないとは思えません。 決めておくのは良いですけど、ちゃんとその方向で考えてくださいよ。 |
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| 同じく少女の様子を見ていたローブの女は落ち着きを取り戻し返答する。 そう。別に賛同が得られるとは思っていないわ。 私も当たらないで欲しいと思っているもの。 |
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| ……何の話ですか? バンダナの女は今度は不可解そうに眉をひそめた。 |
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| タイミングを見計らっていたのか、 黙っていた男が話を止める様に声を発する。 今日来ないんだったらもう寝た方が良いんじゃないか。 |
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| ああ、そうですね。 誰か1人ここに残った方が良いですけど、どうします? 女は話が変わる事に特に不快感も示さず明るい調子でそう返す。 |
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| 私が残るわ。 見張りは適当に交代する様に言っておいてちょうだい。 |
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| 分かりました。それじゃあまた明日。 そう言うと、バンダナの女は物音を立てない様に ゆっくりと天幕を後にした。 |
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| 女が姿を消したのを見て、茶髪の男は残った女に話しかける。 来なかったら誰がリーダーをやるんだ? |
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| 問いを受けた女は目を見開き口を開く。 驚いたわ。あなた空気が読めたのね。 |
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| 迷ったんだが。 やっぱりあの場で言うのはマズかったか。 失礼な発言は気にも留めず、男は淡々とそう返す。 |
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| 言わない選択肢が出ただけマシだわ。 この状況では彼女以外に無いでしょうね。 |
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| カパッサは無理なのか。 | |
| 彼の代わりなんて受けてくれないに決まってるでしょう。 それとも彼女がやるのは何か問題でもあるのかしら。 |
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| いや?そう言う訳じゃ無いが。 どうなるのかと思っただけだ。 |
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| そう。あなたの事だもの、 本当に他意は無いのでしょうね。 |
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| ああ。何か問題があったら悪い。 謝罪の言葉を口にしながらも特に悪びれる様子は無い。 |
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| 別にいいわ。 女は心のこもっていない謝罪に同じく感情のこもっていない言葉を返すと しばし間を空けてから独りごちる様に言葉を発した。 ねえ、あなたはどうなると思っているの。 |
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| 記憶の事か? そうなっても可笑しくは無いと思うが。 主語のはっきりしない問いに、男は同じく意味が判然としない答えを返す。 |
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| それを聞いた女は再度目を見開くと 信じられないといった様子で相手をまじまじと見つめる。 あなた本当にあのラックなの? |
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| 悪い。何かマズかったか。 男は相も変わらず淡々とそう返す。 |
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| いえ、良いわ。 そうね。サマロが成長しているんだもの。あなたも成長するのよね。 |
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| 何の事だか分からないが。 ひとまず今日はこれでいいんだな? |
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| ええ、そうね。 引き止めて悪かったわ。 |
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| そうか。 男は短くそう返すと天幕を後にした。 |
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| 残された女はその姿をゆっくり見送ると視線を正面へと戻し 暫くそのまま思案するのであった。 |
以下はELCafe様(id:2y27)をお招きしての会話になります。
権利問題の複雑化を避ける為アイコンは当方で作成したのものに固定しております。
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刻碑暦998年、10月。時は流れ、巡りも中盤を越える中
黄金の門があるオーラムの市場は今日も活気を帯びる。
往来する人々には武器を携帯する者が多く、
何処かせわしない印象も受ける。
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| ────────────────────── オーラムの市場はいつものように活気に溢れ、 その喧騒の中を歩いて回る少女が一人。 ちょっとは姿を隠した方がよかったのかしら。 …今更だし、いつものことよね。 そ れ よ り も ! いつものお気に入りの紅茶が買えた~♪ ふふんふん~♪ なかなかに上機嫌である。 |
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| ────────────────────── うわっ──! そんな彼女に水を差すかの様に、 人混みに押された誰かが勢いよく背後からぶつかる。 |
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| ────────────────────── ……お………よ? ふいの衝撃に前のめりになる。 う~~~…いたい。 いったい何事なのー! "一応は"敵国の市場であることも忘れ、大きめな声と共に振り返る。 |
す、すみませ……あ。
やや萎縮しながら謝罪をしかけた少年は
ぶつかった相手の顔を見て目を丸くする。
魔王さん。
"黄色い帽子"を被った彼は、至って真面目にそう呼称した。
| ────────────────────── あ、いえいえこちらこそ。 はい、私が魔王です。 ……え。 丁寧に会釈するも、違和感に気づいて顔をあげる。 |
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| ────────────────────── お久しぶりですね。 その節はお恥ずかしい所をお見せしてしまいましたが。お元気でしたか? 少年は微笑みを浮かべると澱むことなく丁寧な口調でそう問いかけた。 やや見上げる形で対峙した彼の身長は、相手と然程変わらない。 |
|
| ────────────────────── …ちょ。 ……ちょっとまってね。 目の前のいるのはくらりんで、 そのくらりんが話してるのはきっと以前あった不思議な現象のことで、 なんだか雰囲気も違って、身長も伸びた? 私が知ってるくらりんにすごく近い気がするけど、つまりええと… …どういうことなの? |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── (巡りの認識のズレ…これもその事象の一つ…?) 何かを思い出したように考え込むも、少年の言葉に我に返る。 何もまずいことなんてないわ。 それよりもくらりん。 私を"魔王"と呼ぶってことは前に出会ったことを覚えているのよね? 話しの後半部分を聞いてなかったかのように 興味津々で問いかける。 |
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| ────────────────────── ええ。忘れも致しません。 魔王さんの探し人は見つかりましたか。 少年は問いに対し頷き肯定すると軽い口調で問い返す。 |
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| ────────────────────── んー、半分みつけたけど半分みつからない。 首をかしげながら、それでもちょっとだけ嬉しそうに笑う。 ところでくらりんは何してるの? |
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| ────────────────────── 半分、ですか。 きょとんとした顔でそう返すも深く突っ込む事は無く 続く投げかけに表情を戻した。 ああ。取引が終わったので相場の確認も兼ねて市を回ってるんです。 何度来てもこの国の市は賑わいが凄いですね。 |
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| ────────────────────── 相場の確認… ふぅん、熱心なのね。 欲しいものがあるかないか、それしか考えてなかったなぁ。 見つけたら欲しいものが買えるまでお金を貯めるの。 えへへ、この制服もそうやって買ったんだよー。 …"此処で"、ではないけれど。 |
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| ────────────────────── それ程熱心という訳でも無いですよ。食べていく為に必死なだけなので、 自身が欲しい物を探す方が余程健全だと思います。 少年は軽く笑みを浮かべそう言うと 続く言葉にやや目を見開き反応を示す。 こちらへ来る前の物だったんですか。それは大事にしないといけませんね。 ご存じかもしれませんが、異世界の物は高値で買い取ろうとする方もいますから。 |
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| ────────────────────── もちろん大事にしてるよ! お気に入りのものも、もらったものも、 全部大事な大事なたからもの。 ひょこっと顔を出したうさぴんくを頭の上に乗せると そういえば… このうさもどきちゃんも、譲り受けたコなの。 君によく似た、くらりん≪探し人≫に。 |
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| ────────────────────── 現れた兎の様な不可思議な生き物を少年はその場でまじまじと見つめる。 これはまた随分と可愛らしいですね。 その方は飼育か何かされてる方だったのですか? |
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| ────────────────────── (くらりんが"可愛らしい"って言った。 確かあのときは"不思議な"ってニュアンスの反応だった気がする。) 意外な反応にきょとんとしながらも答える。 ううん。 なんだか紛れ込んでたみたいで、自分とは関係ないって感じだったよ。 私的には譲り受けたみたいなものだけど。 |
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| ────────────────────── そうなんですか。 少年は相槌をうちそう返すと、考え込むように口に手を添え地を見つめる。 世の中には似ている人物が複数居るという話もありますし、 異世界から来た方なら尚の事興味がありますね。 確かその方は部隊を組んでいたと聞きましたが、 それはどのような方々だったのでしょうか。 |
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| ────────────────────── 似て非なるブリアティルトっていうのもあるみたいだしね! いくつかの巡りかごとに別のブリアティルトとをつなぐ扉が開くとかなんとか。 くらりんの部隊のみんな? えーっと、みんなと話したわけじゃないんだけどね。 サマロちゃんはほんわかーって感じで、 カパッサさんはずばーっ!って感じ? 想像以上に説明が下手だった。 |
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| ────────────────────── 擬音語による説明に少年は目を丸くする。 ほんわか に ずばっと……ですか。 やや困惑気味の彼の肩に、通行人の荷物が当たる。 っと。お話詳しく聞きたいので、少し道を外れましょうか。 お時間はありますか? |
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| ────────────────────── もちろん。 何を隠そう魔王さんは他国の傭兵なので、 表通りは何かと都合悪いのだ、えっへん! え?隠そうとする気が感じられない? ……確かに! …という冗談はおいといて…。 この辺の地理はキミの方が詳しいだろうし、ついていくよ。 今目の前にいるくらりんと、 面識のあったくらりんは本当に同じくらりんなのだろうか。 そう考えるうちに、自然と呼び方が変わっていることに気づく様子はなかった。 |
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| ────────────────────── 異界の魔王さんは傭兵をしていらっしゃったんですね。それは失礼しました。 堂々と振る舞う相手に苦笑しながら先導して行く。 木を隠すなら森の中とは言いますが、見つかる確率も上がってしまいますからね。 自衛が出来るのであればより人目のつかない方へ行きますが……。 魔王さんも部隊のお仲間がいらっしゃるんですか? |
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| ────────────────────── 自衛なら任せてよね。 いざとなったらこの自慢の……逃げ足で逃げる! へいわがいちばーん。 鼻歌交じりでご機嫌な様子だ。 私の部隊はんーっと…最初は二人で立ち上げたの。 いろんな困難を一緒に乗り越えたんだよ! 今は私を含めて四人。 頼りになるおねーちゃん達と、おとーさん…みたいな感じかな。 |
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| ────────────────────── 逃げ切る力も立派な能力の一つですからね。 くすりと笑いながらそう言うと、大通りから一つ外れた道へと進んで行く。 おねーちゃんとおとーさんという事は、魔王さんは妹的な立ち位置なんですか。 私は一人なので、絆が深い相手がいるというのは羨ましいですね。 |
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| ────────────────────── そー言うことになるね。 こっちに来るまでは一人っ子だったし、 ほんとのおとーさんは戦争ばっかりで構ってくれなかった。 だから今が幸せなの。 にこっと笑うと キミにも出来るよ。 仲間や、大事な人が…ね! |
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| ────────────────────── 元の世界でも戦争があったんですね。 少年は話された事情に目を細めそう返すと、 続けて励ますかの様に言う相手につられるように笑う。 そうだと良いんですが。性格なのか、警戒心ばかり強くて人に心を開けないもので。 私に似ているという方も、そのような方だったのでしょうか。 |
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| ────────────────────── 確かにつかみどころのない性格だったけど… うーん…と首をかしげる。 でもこの間あったキミよりは、今のキミの方がすごく近いと思う。 |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── あの時よりすごく落ち着いてるよ。 ふと思い出したように口を開く。 そういえばキミは私と会うのはどれくらい振りなんだろう。 |
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| ────────────────────── そうなんでしょうか。 相手の返答に思い当たる節が無いのか、首を傾げ視線を上にすると 続けて出された問いに視線を戻す。 半年ぶり位になるかと思いますが、魔王さんの記憶とは違うのでしょうか。 |
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| ────────────────────── なんだかもっと経ったように感じるよー。 もしかして私がまったく成長してないだけ? むー、ショック~~。 (不思議な現象だけど、時の流れは一緒……なのね。) |
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| ────────────────────── 起こった出来事が多いと少し前の事も遠くに感じてしまいますから、 それだけ目まぐるしい日々を送っているという事ではないでしょうか。 不安そうな顔をしていた少年は 安堵したのか気が抜けたのか、そう言いながらはにかむ様に笑う。 傭兵の部隊もそれなりの数居るかと思いますが、 探している方々とは何か縁があったのですか? |
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| ────────────────────── あのときはキミだって、 「異世界の魔王が俺に何の用な訳?変な事したら容赦しないからね。」 なーんていってたのに。 思い出したようにくすくす笑う。 前に話したことあったっけ? 私が探している「くらりん」達は、 私がこっちの世界にきて初めて友達になったんだよ。 |
|
| ────────────────────── 少年は相手の台詞を聞くとゆっくりと目を見開く。 それを、私が言ったのですか。 語気は弱く、疑うというよりは寝耳に水といった風である。 成程。初めての友達なんですね。前回お会いした時は少々取り乱していたので 聞きそびれていたかもしれません。 |
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| ────────────────────── くらりんは今も元気にしてるのかなー? 空を仰ぐように見上げたかと思うと、急に真面目な表情に変わり …一つだけ気づいたんだ。 行方不明になるかどうかの法則ってやつ。 |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── この世界に執着があるかどうか。 結論を端的に述べると、補足するように繋げた。 この世界で傭兵として活躍したいとか、 この世界で大事な人がいるとか、元の世界に戻りたくないとか。 ブリアティルトに居る理由がある人ほど、 そういう行方不明に巻き込まれない気がするの。 ……あくまで推測でしかないんだけど。 そこまで言い切ると、少し考え事をするように下唇に指をあてる。 |
|
| ────────────────────── 成程、執着ですか。 目標に向かって進んでいる人は活力がありますし、 そういう意味でも理があるかもしれませんね。 少年は納得する様に頷いてそう返すと数拍置いてから言葉を続ける。 という事は、その方々も執着が無くなってしまったのですか? |
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| ────────────────────── それは違うわ。 少年の方へ向き直るときっぱりと言い切る。 "半分見つけた"って言ったでしょう? 残りの半分は必ず見つけ出す。 |
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| ────────────────────── ……繋ぎ止める、という事ですね。 真顔でそう言った少年は一転してにこやかな表情を浮かべる。 その方と魔王さんが再会する事に失礼ながら興味が湧いてきました。 私に何かできる事はあるでしょうか。 |
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| ────────────────────── こう言っては変な話だけど… くらりんによく似たキミが手掛かりなの。 だから、私と話したことを忘れないでほしい。 それがどう影響を及ぼすかわからない。 それでもいつかくらりんと再会できることを信じて疑わなかった。 |
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| ────────────────────── 話した事を忘れない、ですか。 少年はやや目を見開きオウム返しをするとゆっくりと頷く。 前回は取り乱してしまいましたが、 今回は落ち着いて会話が出来たので恐らく大丈夫かと思います。 |
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| ────────────────────── ほんとに落ち着いてるよ。 冗談混じりにくすくす笑う。 ……だいぶ陽も傾いてきたけれど、大丈夫? |
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| ────────────────────── 問いを受け少年が天を見上げると、 先ほどまで青かった空は確かに赤みを帯びはじめている。 そうですね。そろそろ宿に向かわないと暗くなってしまいそうです。 魔王さんはどちらに帰られるのですか?先ほどの所へ一度戻った方が良いですかね。 |
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| ────────────────────── 私は魔王よー? 夜のフライトはお手の物。 このままセフィドに帰るつもりだから案内はへーきへーき。 |
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| ────────────────────── 少年は相手の返答に一瞬目を丸くするもすぐににこやかな笑みをたたえる。 成程、魔王さんに心配はご無用でしたか。それは失礼いたしました。 二度あることは三度あると言いますし、またお会いする事もあるかもしれませんね。 話した事はしっかり覚えておきますので、道中お気をつけて。 |
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| ────────────────────── 遅くまでどうもありがとう。 ふふ …またどこかで、ね。 つられて笑顔になると、手を振り、翼を広げて飛び立つ。 ………… ………… あの時は不安定だったのか、消えちゃったけど ここまではっきりとお話できたなら… きっとそのうち、戻ってくるよね?くらりん。 少年の姿が見えなくなるほど高くまで上昇すると、 誰に話すでもなく小さくぽつりと呟いた。 |
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刻碑暦998年、4月。
セフィドの王都からやや東に外れた場所に開かれたとある市場では
戦時中である今日も民や傭兵達が必要な物を売り買いする姿が見られる。
空は晴れ、暖かな日差しが人々を照らし出す穏やかな午後。
これより紡がれるのは、そんな日に起こった出来事である。
――――――――――――――――――――
| ────────────────────── いつにもまして賑やかな市場を、鼻歌混じりに見て回る少女が一人。 これで買い出しは…たぶん終わり! 何か掘り出し物とかないかなー? 見慣れた風景も、人々の往来や喧騒により、どこか新鮮にさえ思える。 それにしても今日はいつもより人が多いのは何でだろ。 ふと視線を向けた先に映る人影。 ……およ?あれは……。 |
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────────────────────── |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── んん…? 何かに惹かれるように店に近づいていく。 最初は興味本位だったのかもしれない。 2人の声が聞こえるくらい近くなると、懐かしいような不思議な感覚を覚える。 ( ………。) 様子を伺うように聞き耳を立てる。 |
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| ────────────────────── 短いやりとりを続けた後、店主は立ち止まる客が増えたのを横目に見ると 別れを切り出す様に少年にこう告げた。 お前もその年でご苦労様だな。 また頼むよ、クラリエント。 |
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| ────────────────────── ( ……クラリエント? ) 聞き覚えのある名前。 この世界に来て出会い、仲良くなり、何時の巡りからか聞かなくなった名前。 |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── ( 名前が同じってことはよくある話だけど… あれは… ) ( 確かめなきゃ! ) …待って! 見失わないように脇道へと入る。 |
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────────────────────── |
距離が近づくにつれ、疑惑は確信に変わる。
"姿こそ小さいものの"、間違いない。間違えるはずもない。
追いつき、呼び止め、声をかける。
…くらりん?くらりんなの?
| ────────────────────── はっ?……くらりん? 呼び止められた少年は一瞬警戒の色を見せたものの、 出て来た単語に不思議そうな顔を浮かべ確認するようにおうむ返しをした。 |
|
| ────────────────────── ………。 確認するように顔を覗き込む。 今までどこにいってたの?なんで小さいの? あ、小さくなる魔法でも覚えたの? それとももしかしてもしかしなくとも巡りの影響? 私の事覚えてる?あのくらりんと同じくらりんなの? 何から聞いていいのか整理がつかず出てきた言葉は… ええと…ええと…くらりんだ。 |
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────────────────────── |
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| ────────────────────── おー、2個同時に解決した。 ぽむっと大げさにジェスチャーする。 自己紹介がまだだったね。 私は異世界の魔王…の娘、だよ。 そしてくらりんは君のことだよ、クラリエントくん。 先程の会話が聞こえちゃってね。 これでも私は耳が良い方なのだよ、えっへん。 いつもの調子なんだか違うんだかよくわからないテンションで話し出す。 |
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| ────────────────────── ……は、はあ。 相手の言葉を信じているのかいないのか、 少年は毒気を抜かれた様子で返事を返す。 えーと。それでその異世界の魔王が俺に何の用な訳? 売れそうな物も今手元にないんだけど。 |
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| ────────────────────── (掴みはばっちりね…!) 何から話したものかしら…と考えた後に口を開く。 私のお話をひとつ聞いてくれる? そんなに時間はとらせないわ。 |
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| ────────────────────── 別に聞くだけならいいけど。 変な事したら容赦しないからね。 少年は再度険しい表情を浮かべ返答する。 |
|
| ────────────────────── 容赦しないとどうなるか気になる! …という冗談はおいといて。 むかーしね、セフィドを始まりの地として、 五か国で行商をしたり、見聞を広めたりしながら旅をしている部隊がいたんだ。 それがね、ある日を境にぱったりと連絡がとれなくなっちゃったの。 実はそういうことってここでは珍しいことではなくて、 日に日に忘れられていっちゃうんだって。 …怖い話でしょ? 反応を伺うように話をいったん止める。 |
|
| ────────────────────── 表情を変える事も無くゆっくりと話を聞いていた少年は 投げかけられた問いに口を開く。 異界から来た傭兵の話? 戦争もしてるし、それは仕方ない事なんじゃないの。 俺は知らないけど、異なる世界から来たら 帰りたいって思うのが普通だろうし。 |
|
| ────────────────────── "帰りたい"…。 自分にはなかった考えに言葉を詰まらせる。 そっか…そうだよね。 普通なら…そう考えるよね。 もし帰ったのだとしたら無事に帰れたのかな。 それなら手紙の一つくらいくれてもいいのに。 あ、帰っちゃったらこっちと連絡手段ないか。 でも無事ならそれはそれで…… ………じゃあ目の前のちびくらりんは何なのかしら……。 |
|
| ────────────────────── 何、あんたの知り合いの話? 少年は独り言に近い状況になっている相手にそう聞くも 返事を聞く前に視線を逸らし苦い表情を浮かべる。 ……はあ。同じ名前が居るんなら変えようかな。 |
|
| ────────────────────── ほんとに何も知らないの? くらりんってその人のことであり、君の事だよ。 でも不思議なことに…君は小さくて。 私が知ってるくらりんは大人だった。 20歳ちょっとの…。 これ以上説明する術を持たないかのような自信のなさそうな受け答えになる。 |
|
| ────────────────────── 悪いけど、俺は異世界から来ても無いし記憶もこの年までしか無いよ。 拒絶する様に少年はそう言ったかと思うと 何かに気付いた風に真剣な面持ちで向き直った。 ねえ待って。その人そんなに俺に似てるの? |
|
| ────────────────────── 生まれも育ちもこの世界なの? (やっぱり何かがおかしい…けど、上手く言い表せない。 うーん…うーん…。) 似てるどころか、君をそのまま大人にした感じ…といえばいいのかな。 いつもくらりんって呼んでたから… えーっと…えーっと…名前は確か…クラリエント・ジールタル 。 |
|
| ────────────────────── ッ!丸々一緒じゃん……! 他人の名前つけるなんて何考えてんのあの人……! 少年はフルネームを聞き苦虫を噛み潰したような表情をすると 声を震わせながらそう独りごちる。 どうやら意図的に同じ名が付けられたと思っているらしい。 |
|
| ────────────────────── ……名前をつけられた? ちょっとその話、詳しく聞かせてもらえないかしら。 (もしかしたら何かわかるかもしれないし) |
|
| ────────────────────── ああ……うん。 相手の投げかけにやや戸惑いながらも肯定的な返事をした少年は ゆっくりと話し出す。 俺、訳あって家を出たんだけど。 商人として名を売る過程で家に話が伝わったら嫌だろうって……。 付けてくれたんだ、おじさんが。 出てきた人物との関係性を説明する余裕も無いのか、 段々と表情を曇らせていく少年からは断片的な言葉しか出てこない。 ……お前の新しい名前だって、言ってくれたのに。 |
|
| ────────────────────── …なるほど。 こんなこと聞いちゃって悪いのだけど、君の本当の名前はなんなのかしら? なんだか他人だと思えなくて。 もちろんその名前も「おじさん」が意味あってつけてくれたのだろうけど。 |
|
| ────────────────────── 俺の、名前は……。 ルカール。ルカール・インリテッド。 少年はか細い声で元の名を告げる。 でも、もう。この名前は捨てたんだ。 |
|
| ────────────────────── ルカール、いい名前だね。 でも、君がそう言うのならクラリエントの方で呼ぶよ? もっとも、"くらりん"だけど。 (名付け親の「おじさん」に聞いてみるのが早いのかなぁ…?) それにしても何でクラリエントって名付けたんだろうね? 深く考えることのない性格ゆえに、ストレートに疑問を投げかけた。 |
|
| ────────────────────── 問われた疑問に少年は無言のまま思案する様にゆっくりと視線を逸らすと 数拍の間をあけ相手に再度真剣な眼差しを向ける。 俺、理由は聞いてないんだ。 だから今の状況でおじさんをどうこう言うのはやめる。 はっきりとした口調でそう宣言し、言葉を続ける。 話が途中だったら悪いけど、やっぱり俺すぐ戻って聞いてくる。 |
|
| ────────────────────── あ、待って! こんな質問したのも私だし、一緒にいかせて。 この子は本当にくらりんなのだろうか。 いろんな考えを巡らせるも、答えに結びつかない。 原因を探るべく彼についていくことを提案する。 |
|
| ────────────────────── 分かった。ついてきて。 |
|
|
────────────────────── |
|
| ────────────────────── ……? 歩みを止める少年に不思議そうな顔を向ける。 小道や脇道があるとはいえ、セフィドの中でも栄えてる地区であり、 道に迷う程構造は複雑ではない、はず。 ……どうしたの?くらりん。 |
|
|
────────────────────── |
|
| ────────────────────── (「おじさん」と別れたのはすぐそこだったハズ…だけど、 なんだか様子がおかしいような…。) さっきおじさんと別れたところ? それともおじさんのおうちは遠いのかしら? |
|
| ────────────────────── ……違う。名前を付けてくれたおじさんは、別の人で。 俺と一緒に旅して同じ宿に泊まってて。 少年は問いを受けようやく顔を向けると 悲痛な表情でそう答える。 覚えてない訳が無い。今日だってその宿からここに来たのに。 分からないはずないのに……! |
|
| ────────────────────── なるほど、あのおじさんとは別の人なのね。 続く言葉に"異変の予感"は悪い方向へと当たる。 ………。 くらりん、落ち着いて? |
|
| ────────────────────── っ……。 帽子のつばを押さえ視線を下にした少年は 数回深呼吸をした後再び喋り出す。 今朝はおじさん……ランカッツさんと話して。 俺一人で、宿を出て……。 記憶を辿るように一つ一つ言うその声はやや震えている様にも聞こえる。 |
|
| ────────────────────── (やっぱり様子がおかしい…。) それまで後についていくように距離を置いていたが、 駆け寄ると宥めるように声をかける。 今朝はそのランカッツさんと話して、今ここにくらりんはいる。 それはきっと間違いないわ。 さっきのおじさんと出会う前のことでもいい。 落ち着いてゆっくり思い出して? |
|
| ────────────────────── 市場に行く前は……。この道を通ったんだ。 だから、この路地から辿って行けば着ける筈なんだ。 少年はそうは言いながらも声色を明るくする事は無く、 地面を見つめながら言葉を続ける。 宿から出て通った道は覚えてるんだ。 でも、どうやってここに来たのか……。 矛盾した言葉を並べたが、嘘をついている様にも見えない。 |
|
| ────────────────────── (すごく不安定な…もしかしてこれは…。) リズが知っている"くらりん"とは違う"くらりん"。 自分が干渉したことが不安定になった原因なのか、それとも…。 とにもかくにも不安にさせないために精一杯明るく声をかける。 それならまずはこの路地を辿っていこう? 大丈夫、私がついてるから。 ね、くらりん? |
|
| ────────────────────── ううッ……。うん……。 優しい声掛けに安堵したのか、塞き止める限界だったのか 少年の頬を涙が伝う。 俺、何やってんだろ……。 自嘲めいた言葉とは裏腹に一つ、また一つと涙は零れ落ちていく。 |
|
| ────────────────────── 不安なら私が先にいこっか。 先程少年が示した路地を先導して歩く。 他愛もない話を交えたりしながら。 |
|
| ────────────────────── うん……。 少年は涙を流しながらも彼女の後に続いてゆっくりと歩き始める。 簡素ではあるが話に対し時折相槌を入れながら進むも、 不安の色は消えそうにない。 |
|
| ────────────────────── …それでね、そのくらりんによく似てるくらりんに出会ったときにね ピンク色のうさもどきちゃんを譲り受けたんだ。 もっとも本人は「自分とは無関係なのでお好きにどうぞ」って顔してたけどー うさぴんくって名前つけたんだ。今度連れてくるね? 相槌を求めた訳ではないが、話しかけるようにさり気なく振り返った。 |
しかし、すぐそこに居た筈の少年の姿が視界に映る事は無かった。
直前に角を曲がった訳でも無く、物音が聞こえた訳でもなければ
周囲に何かが落ちている事も無い。
| ────────────────────── …くらりん? 振り返った先には"何も無く"、呼びかけは届かない。 一つの再会のカタチは泡沫のように消えゆく。 …………。 いくつもの考えを巡らせるも、答えには結びつかない。 深く落ち込んだ後、顔をあげるとそっとその場所を後にした――。 |
| |
とある宿の一室にくつろいでいる3人の男女の姿がある。 同じ室内に居るものの特に話す事も無く、 各々が自分の時間を過ごしている様だ。 |
| しばらくしてロビーの方から聞こえていた雑音が大きくなると 一人の男がその方向を見ながら口を開く。 ……やけに騒がしいですね。 |
|
| それを聞き、その場に居た女も喋り出す。 まだどんちゃん騒ぎをするには早いと思いますけど……。 何かあったんですかね?見てきましょうか? |
|
| 女がそう提案すると、黙っていたもう一人の男が腰を上げた。 いや、俺が行く。 |
|
| ああ。分かりました。 | |
| すると動き出す男に金髪の男が掌を向け声をあげる。 待ってください、足音がしますので通り過ぎてから―― |
金髪の男の発言を遮るようにして、一人の男が室内に入って来た。
少女を脇に抱えた男は血で汚れた風貌に加え呼吸が荒く、
赤く染まった右肩の先からは あるべき筈の腕が見当たらない。
| !? 丁度断面にあたる方に居た女は 男を見て目を丸くすると自身の口元を手で覆う。 |
|
| おい、どうした! 周囲が絶句する中茶髪の男が真正面に近寄るとそう言い放った。 |
|
| サマロは大丈夫だ。 問いを受けた男は視線を合わせる事もできず、そう弱々しく返答をする。 |
|
| そうじゃないだろう!?何があったんだ! 叫ぶ男は少女を代わりに支えるどころか 今にも目の前の男に掴みかかりそうに見え、 酷く動揺している様子である。 |
|
| 悪い。腕と剣は……持ってこれなかった。 | |
| 何を、言っているのですか? それまで絶句していた金髪の男は呟きを聞き絞り出す様にそう言った。 その声は僅かに震え、心なしか手も震えている風に見える。 |
|
| サマロが。居たから……傷は。 負傷した男はそう言うと糸が切れたかのように少女と共に崩れ落ちた。 |
|
| ラック!! |
*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*
ある男は言った。このパーティに固執する理由はもう無いと。
生きる為に戦うべき理由がもう自分達には無いと。
それを早く伝えていれば
こうはならなかったかもしれないと。
そう告げた。
それに対し
声を荒げる者は居なかったが、
首を振る者もまた
居なかった。
そ の 後 の事 は も う
よ く 覚 え て い な い 。
| 一人の女が宿の一室に入って来ると 中に居た人物に向かって声を掛けた。 果物貰ったんですけど今食べたい人って居ます? |
|
| その声に一人の男が返答する。 果物ですか? こちらではそう採れないと思いますが、 聖国か央国からわざわざどなたかいらっしゃったのですか? |
|
| ああいえ、同じマッカの人なんですけど。 育ててるって言ってましたよ?道具か何か使ってるんですかね。 女は熟れた実をまじまじと見ながらそう言う。 |
|
| まさかまたよく知りもしない相手から 貰って来たんじゃ無いでしょうね。 |
|
| ちっ、違いますよ!今回はちゃんと知ってる人からです! そりゃ、詳しく知ってるかって言われたらちょっと困りますけど。 というか、突っかかってきても どのみちシリールさん食べないじゃないですか! |
|
| そうね、食べないわ。 食べないけれど、何処の誰から貰って来たかは 誘う前に言うべき事じゃないかしら。 それが出来ないのならおとなしく一人で食べるべきだわ。 |
|
| ちょ、ちょっと前後しただけじゃないですか! 確かに言わなかったのは悪かったですけど……。 そもそも、このメンバーでそれで問題になるとは思えなくないですか? |
|
| 口論になり始めた二人を見て 部屋に居た橙色の髪の少女がおろおろとしている。 |
|
| 一方で金髪の男は口を挟む事はせず 喧嘩をふっかけている女の挙動をじっと見ている。 |
|
| ええ、そうでしょうね。だからこそ心配だわ。 女はそう言い、次の言葉を紡ごうと息を吸う。 |
|
| 続く言葉を遮るかの様に男は発言する。 シリール。 私が見ても今回は貴女が和を乱しています。 言っている事は尤もですが、穏便にすみませんか。 |
|
| 女は静止を受けると男と暫し目を合わせ口を開いた。 ……そう。それが貴方の選択なのね。 いいわ、止めろと言うのなら私もこれ以上は手を出さないわ。 強く当たって悪かったわね。 |
|
| 2人のやりとりにバンダナの女は怪訝そうな顔を見せる。 いや、別に良いですけど……。 二人揃って何を隠してるんですか? |
|
| おやおや、人聞きが悪いですね。 私たちが何か企み事をしているというのですか? |
|
| 企みかどうかは知りませんけど。 ……まあいいです。結局二人はこれ食べないって事ですよね? サマロはどうします?この二人は食べないそうですけど。 |
|
| あ……えっと。 その、食べます。 |
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| じゃあ、剥きますね! 半分こして食べましょう! |
|
| 二人が仲良く果物を剥き始める中金髪の男は再び女を注視したが 相手は読書を始め二人の視線が交わる事は無かった。 |
******************************
シリールがメンバーの枷が外れたという事に気づいており
それを察知したクラリエントが発言を止めている。
シリールはそれを受けこの件についてはクラリエントに委ねると決めた。
| 宿の一室に一人の男の姿がある。 手にしていたいもけんぴを見つめ、一つを口に放り入れた。 |
|
| そこに目つきの悪い男がやってくると その様子を目にとめ声を掛ける。 そんなもん持ち込んでたのかお前。 |
|
| ん?ああ、貰ったんだ。 白い髪で赤いリボンをしていた……誰だったか。 名乗ってた気がするが忘れたな。 |
|
| ……覚えてない奴から貰ったのをよく口に入れたな、お前。 あっけらかんとそう答える相手に対して呆れた様子でそう言う。 |
|
| 悪い。思い出したら伝える。 呆れられている事は微塵も気にせず 全く悪びた素振りも見せずそう淡々と返答する。 |
|
| そういう問題じゃ無いと真っ向からお前に言った所で無駄だな。 貴重な食糧を無断で食うのはよせ。 |
|
| 言われてみればそうだな。 クラリエントに確認すればいいのか? |
|
| あいつでもチシミアでも良いが。 俺は責任を取らないからな。 |
|
| そうか、分かった。 | |
| ……一応言っておくが、 お前が死ぬ程腹を空かせてた場合は別だからな。 |
|
| ああ、分かった。肝に銘じる。 | |
| つくづく思うがお前も良くその応対で今まで生きれたもんだな。 そのお前について来てる俺らも相当なもんだが。 |
|
| ああ。俺には勿体ないメンバーだな。 感謝している。 |
|
| 真顔でそのセリフを言うのもお前くらいだな。 背中を預けて良いと思えるのもお前というのが可笑しな話だが、 慕う者がいる以上簡単に死ぬなよ。 |
|
| 特に自殺願望は無いんだが。善処する。 | |
| あってたまるか。 | |
| そうか。 深読みするのは苦手なんだ、悪いな。 |
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| それも承知の上だ。言いたい事を言ってるだけだから気にするな。 最も気にしてる様には全く見えないが。 |
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| そうか?それならいいが。 | |
| ……本当にその対応で良く生きてこれたもんだな、お前。 |
反映会話2:挨拶回り帰還 手土産/クッキー ラック クラリエント
| 宿のロビーで一人の男が手紙を読んでいる。 周囲には人も見え、表情が真剣でない事から見ても 特別秘密にすべき情報が書かれているものでは無さそうである。 |
|
| そこへ包みを持った男がやって来ると 元居た男に気づかなかったのか通り過ぎようとする。 |
|
| それに気づいた金髪の男はすれ違い様に声を掛けた。 ああ、ラック。戻ったのですか。 どうでしたか訪問は。 |
|
| 悪い。これを貰った。 そう言い、持っていた包みを見せると僅かに甘い匂いが漂う。 |
|
| ……ラック。あなた何を振る舞われたのです? 包みを見せられた男は怪訝な顔を見せながらそう言った。 甘い匂いとは別に相手の呼気に何かを感じたらしい。 |
|
| 酒と干し肉を少し食べてきた。 その後茶は飲んできたんだが。 |
|
| ……さっきの謝罪はそれですか。 通り過ぎようとしたのは罪悪感ですか?それとも酔っているのですか? 返答を聞きため息交じりに呟くと険しい表情でそう問い詰める。 |
|
| いや、隠した所でどうにもならないだろう。 酔っているかどうかは分からないが。 表情を変える男とは対照的に真顔でそう答える様は 開き直っている様にも思える。 |
|
| 自分が倒れた事を忘れたのですね? いくら巡りの事があるとはいえ、それを忘れられると困ります。 貴方の変わりは居ないのですよ? |
|
| 悪かった。気を付ける。 目は逸らさないものの、相変わらず淡々とした口調でそう返す。 |
|
| 金髪の男は感情の見えないその返しに特に怒る事も無く 表情を元に戻すと目を逸らした。 ……あなたにばかり責を問うのは良くないですね。 巡り変わりの確認事項に加えておきましょう。 |
|
| ああ、そうしてくれると助かる。 | |
| 水を飲んでおいて貰えますか。 その分調達は少し早めますので。 |
|
| 分かった。 よりによってこんな時に悪いな。 |
|
| 全くです。二度と無い事を祈りますよ。 言葉と裏腹にやや冗談めかしてそう言い そのお菓子はいつもの所に置いておいてください。 食べたければお好きに。 |
|
| ああ、分かった。そうする。 茶髪の男はそう言うと部屋のある方へと歩いて行った。 |
|
| 残された金髪の男は相手が去ると視線を上げ どこか切なげな表情で独りごちる。 ……困りますよ、倒れられては。 |
******************************
ラックが信頼されている事を表す問答。
「よりによってこんな時に」は食糧が貴重なマッカにいる時にという意味。
倒れたというのは門を越える前の出来事を指している。
スタメン変更:クラリエント 控え→サブ
| 宿のロビーと思わしき場所で、ターバンを巻いた一人の男が 目の前にいる "誰か"に対し目を細め言葉を放った。 本当に出るんだな。 |
|
| 言葉を受けた金髪の男はおどける様に空の両手をあげながら 余裕のある表情で言葉を返す。 疑っていらっしゃったのですか? 確かに前の巡りでは出ていませんでしたが戦闘職になる訳でもありませんし そう心配する事は無いかと思いますが。 |
|
| 俺がお前を心配していると本気で思っているのなら お前は今すぐその場を外れた方が良いな。 |
|
| それが冗談だと分からないほどあなたも愚かでは無いでしょう。 やけに突っかかって来ますが、何か不満でもあるのですか? |
|
| ……じゃあ聞くが、お前は何のつもりで爆薬の準備をしてるんだ。 相変わらず聖国に近い場所に身を置いておきながら、 まさかその覚悟が持てたと のたまうつもりじゃ無いだろうな? |
|
| いけませんか? 元より聖国に戻る気でいるのです。 この期に及んで別の地域に身を置く等という方が逃げではないかと私は思いますが。 |
|
| はぐらかすな。今のはどっちの返答のつもりで言ったんだ。 | |
| ……両方ですよ。 覚悟が出来た等とおいそれと言う事は出来ませんが、 それが必要となる場面で逃げる程の繊細さは生憎持ち合わせておりませんので。 それとも、私が逃げた方が都合が宜しいのですか? |
|
| いい度胸だな。 それを言うからには今回は最後まで出るんだろうな? |
|
| 元よりそのつもりです。満足ですか? | |
| 言質はとったぞ。せいぜい役に立つんだな。 男はそう言うと弓を持ち外へ出て行った。 |
|
| そう言い去っていく相手に対し金髪の男は引き留める事も無く見送ると ゆっくりと独りごちる。 同じ場所へ向かうというのにせっかちなものです。 |
|
| そこへ部屋から繋がる方から別の男がやって来ると 慌てる様子も無く金髪の男に声を掛けた。 遅くなった。カパッサはもう行ったのか。 |
|
| ああ、入れ違いになりましたか。 準備ができたのなら行きますがどうしますか? |
|
| 問題ない。 こっちはチシミアに任せる形で良いんだな? |
|
| ええ。長期間空ける事もありますが、 この立地ですしいざとなれば如何様にもなるでしょう。 他の宿泊客とのトラブルだけが心配ではありますが、 それは何処でも変わりませんので。 |
|
| 分かった。次の行き先は決めてあるのか? | |
| 次ですか? 帰ってきてから目星を付けないと戦況が変わるかと思いますが、 急いだ方が良いのですか? |
|
| 悪い。言葉足らずだった。 次の陣営は決めてあるのかと思っただけだ。別に今聞かなくても良かったな。 男はそう謝罪の意を述べるものの表情は無表情のままであり さほど申し訳なく思っている様には見えない |
|
| ……次、ですか。 男はその態度が気に止まらなかったのか はたまた聞かれた事が余程意外だったのか 言葉を詰まらせると目を細め思案し始める。 |
|
| 深い意味は無い。話を止めて悪かったな。 今は先を急いだ方が良いんだろう。 |
|
| ……ええ。そうですね。 待たせてしまう事になりますし、今は先を急ぎましょう。 金髪の男は歯切れの悪い調子でそう返答をすると 茶髪の男と共に外へ向かっていった。 |
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聖国に近い場所を選んだのは残した女達の万が一の為を思っての事だが、
その意図にカパッサは気づいおらずクラリエントは説明する気も無い。
※カパッサの「どっちの返答のつもりで言ったんだ」は
クラリエントの「いけませんか?」という返答が「爆薬の準備をしていた事」に対してか
「覚悟が持てたと のたまう」に対してか という意味。
カパッサの言質の発音は「げんち」
| 夜明け前、雨が降る中で聖国のとある天幕の外に一人の男の姿がある。 男は立ったまま暫くぼんやりとした後ゆっくりと天幕を振り返るも 中に入る様子は無くそのままの姿勢で天幕に視線を送った。 |
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| そこへ何処からか金髪の男が走り寄って来ると 男に対し慌てた様子で声をかける。 ラック!皆さんはその中に居ますか!? |
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| 元居た男はやってきた男に視線を向けると 無表情のまま口を開く。 なあ、俺はどうしてここに居るんだ。 |
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| それは、巡りの事を忘れたという事ですか? それとも何故帝国では無いのかという事ですか? |
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| ここは聖国だろう。 さっきまでお前と宿で話していたと思ったが、何かあったのか? |
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| ……ラック。何をどこまで覚えていますか。 私以外のメンバーの事は分かりますか。 |
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| カパッサ達の事か? 遠征に出かけたんじゃなかったのか。 |
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| カパッサ以外に部隊に誰が居たのか正確に答えていただけますか。 | |
| ……何かが起こったんだな?今の瞬間に。 | |
| シリールが全て覚えているはずです。 皆さんを集めて記憶の統合をしましょう。 |
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| 天幕へと足を向ける相手に対し 茶髪の男は慌てる様子も無くこう言い放つ。 お前も覚えてないのか。 |
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| 金髪の男はその言葉に動かしかけた足を止めると そのままの形で静止した。 |
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| ラックは、あの話を覚えていらっしゃいますか。 | |
| 捨てる話か。 | |
| もしこのまま悪くなる一方だとしたら。 私はもうそれ自体を認識できなくなるかもしれません。 |
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| そうか。 | |
| ……ひとまず中に入りませんか。 このままでは体温が下がる一方です。 |
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| ああ、分かった。 |
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クラリエントに余裕が無いのは、
彼自身が巡りを越えて一瞬メンバーを思い出せなかったから。
| 俺がリーダーをやるのか。 不安も緊張も乗せない淡々とした口調で 茶髪の男は目の前の "誰か"に対しそう言った。 |
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| その言葉を受けた "誰か"は 余裕のある表情を浮かべ口を開く。 ええ。随分と待たせてしまいましたが、やはりあなたが適任だと思いますので。 それで問題ないですね? |
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| シリールは良いのか?順番にやると言っていた気がするが。 | |
| ああ……彼女ですか。 出来ない事は無いでしょうが、流石に今の状況で出すのは酷かと思いますよ。 それがあなたの希望だと言うのなら考えますが。 |
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| 説得に支障が出るから戻さないのかと思ったが、違ったのか? | |
| ……流石に、あなたでも分かりますか。 まあ、その時はその時でまた考えるまでですよ。 |
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| そうか。お前が良いんなら構わない。 何か特別する事はあるか? |
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| こちらの流れに沿ってもらいますが、いつも通りやって頂ければ問題ありません。 その都度指示を出させていただきますよ。 |
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| そうか。 | |
| 金髪の男は会話が続かないと見ると 地面を見つめ神妙な表情を浮かべる。 |
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| それを見た茶髪の男は 表情一つ変えずに真顔でこう切り出す。 お前は、何か捨てるのか? |
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| 金髪の男はその言葉に目を見開き相手を見ると 笑みを浮かべ暫しの間の後に口を開いた。 ……何の事、でしょうか。 平静を装ってはいるものの、明らかに動揺している様に見える。 |
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| いや。何となくそう思っただけだ。 聞いたらまずい事だったのか。 動揺する相手に態度を変える事は無く茶髪の男は淡々とそう返す。 |
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| いえ。構いませんが……。 ああ、他の方にはどうか内密に。 |
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| ああ、わかった。 | |
| 金髪の男は承諾を聞くと暫しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。 こちらに来るまでは、捨てる選択肢など無かったものですからね。 一度模索してみているだけですよ。 |
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| 門を越えたからか。 | |
| ええ、そうです。 変わらないと思っていた物が、全てひっくり返ってしまった。 それぞれにあった逃れられない鎖が、もう存在しないのです。 そこに繋がれている意味は、全て無くなってしまったのではと。そう、思ってしまうのです。 |
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| それはお前が望んでる事なのか? | |
| どう、でしょうね。 今はまだ……計りかねていますが。 すぐに結論を出せないからこそ、迷っているのでしょうね。 |
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| そうか。 | |
| 気づきたくなかったものです。 私以外にその道を見てしまった方がいるかは分かりませんが、時間の問題でしょうね。 今はまだ、目先の問題があるから見えないのです。 それが終わってしまったら。遅かれ早かれ……見つけてしまうでしょう。 |
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| ……見つけて欲しくないのか。 | |
| ……っ。 どうやら、そのようです。 私は、恐れているのですね? |
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| それが答えか。 | |
| 認識したくはありませんでしたが、どうやらその様です。 その上で、私がどう行動するかという事にはなりますが。 |
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| そうか。何か見つかったんなら良かったな。 そう言った茶髪の男の口調や表情からは喜ぶ様子は勿論 呆れる様子や苛立ちすら伺えず、酷く単調なものであった。 |
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| そんな男に対し相手は疑問を投げかける。 今更なのですが。 理解できない話に相槌を入れるのは恐ろしくは無いのですか?ラック。 |
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| 本当に今更だな。俺はお前の指示に従うだけだが、 やめた方が良いのか? 問いを投げかれられた男はその言葉に突っ込みを入れる事も無く あっけらかんとそう答えた。 どうやら話を理解していないのは事実らしい。 |
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| いえ。そのままでいてくださるのであればとても嬉しいですよ。 一人ですとどうにも思考が先に行かなくて困りますね。 |
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| 別に大したことはしてないと思うが。 他には何かあるか? |
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| いいえ、何も。 ああ、リーダーの件については また後程皆さんの前で話させていただきますので。 |
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| そうか、分かった。 | |
| 宜しくお願いいたしますよ。ラック。 |
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それぞれにあった逃れられない鎖
チシミア:借金(宿への束縛) ⇒ 一般市民として生活可能
カパッサ:借金(稼ぐ必要性) ⇒ PTとして活動する意義の喪失
シリール:魔力(異端的存在) ⇒ 一般市民として生活可能
そこに繋がれている意味=この6人で活動する意味
捨てる選択肢=PTを解散する選択肢
次期スタメン変更:クラリエント 控え→サブ
カパッサ クラリエント
| 宿のロビーと思わしき場所で、 一人の金髪の男は誰かに向かってこう発言した。 親しくした相手と、対峙する覚悟は出来ていますか。 |
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| 声を掛けられた"誰か"は 腰掛けていたイスの背もたれに手を付けながら振り向き、怪訝な顔を見せた。 今度は何の話だ。 リーダーの件は今回限りだったはずだぞ。 |
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| ……いえ。次の巡りもあなたに戦場で活動して頂きたいと思いましてね。 弓の腕も随分と戻られた様ですので。 声を掛けた男は相手の表情に怯むことも無くそう告げるも語気は弱く、 やや目を逸らしながら言う様子から見るにその言葉は本心では無さそうである。 |
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| その様子を見た茶髪の男は更に表情を顰め軽く舌打ちをする。 まさかとは思っていたが、お前が引っ込んでたのはそれが理由か。 何だかんだ言い訳しておきながら、お前も人間だな。 |
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| ……。 | |
| 吐き捨てる様にそう言った後、 口を開かない相手に対しやや語気を弱め再び口を開く。 生憎俺はお前と違ってそう甘くない。 例外が無いとは言わないが、武器を持った時点で覚悟をするべきだろう。 |
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| ……そうですね。私には持つべき覚悟がありませんでした。 いくら状況からしてそれが仕方の無い事だったとはいえ。 簡単に爆薬など、放つべきでは無かった。 |
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| 何だ、今日は気持ち悪いくらいに素直だな。 俺に実害を与えないのならどうとでもいいが、心変わりでもしたのか。 |
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| おや、これは失言でしたね。 あなたに弱みを握られたらどうされるか分かったものではありません。 今の言葉はどうかお忘れくださいますようお願い致しますよ。 金髪の男は一転して冗談めいた口調でそう返す。 述べた願いも、叶うとは思っていなそうな口ぶりである。 |
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| 願われた茶髪の男はそれに対し返答する気は無いらしく、 別の話題を口に出す。 枠は次もあいつに押し付けるのか。 この期に及んでサマロだなんて言うんじゃ無いだろうな。 |
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| いえ。次は連邦へ行きますので女性陣に無理をさせる訳には参りませんよ。 少々身の振り方は変えますが、戦場へは私が行きます。 |
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| 戻すのか。 返答を聞いた男は何をとは言わず、短くそう聞いた。 |
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| 突っ込みを入れられた男は苦い表情を浮かべる。 どうやら先ほどよりこちらの方が失言だった様だ。 言うつもりは無かったのですが、そうなりますね。 元よりそこにあるべきは彼でしたので、異論は出ないと思いますが。 またその話も皆さん揃ってからさせていただきますよ。 |
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| 結局お前は何を目的にしてそうしたんだ。 それで何か得られるものが少しでもあったのか? |
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| やや毒のあるその聞き方に対し、金髪の男は得意げに笑みを見せる。 あなたはこの巡りで何も得られなかったと仰るのですか? それでしたら随分と面白みの無い物の見方をお持ちですね。 待っていたとばかりに話を逸らすその様子を見るに 真意を語るつもりは微塵も無いらしい。 |
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| チッ。意味の無い問答に付き合う義理は無いな。 そろそろ帰ってくる頃だろう。終わりなら俺は行くぞ。 |
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| ええ。構いませんよ。 どうぞ宜しくお伝えください。 |
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| ふん。 許可を得た男は返事もろくにせず立ち上がると コートと帽子を掴み外へと出て行った。 |
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| 残された男はその姿を見届けるもその場を動く事は無く、 神妙な顔で静かに独りごちる。 ……どうなりますかね。 |
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「枠は次もあいつに押し付けるのか」
=「リーダーでない戦闘枠は次もチシミアに押し付けるのか」
「戻すのか」=「リーダーをラックに戻すのか」
女性陣に無理はさせないというクラリエントの発言から瞬時に導き出した。