奇飛の追憶の過去自部隊会話ログとか過去の話とかぼちぼちと。
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過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘3
| 俺は冒険者になる気は無い。何度も言わせるな。 | |
| そっ……即答しなくたって良いじゃないですか! 少しは考えてみてくださいよ!良い話でしょう!? |
|
| 太陽が注ぐ寂れた小屋の前で女の声が響き渡った。 日を改めやって来たものの、新しい提案も無下にされた様である。 女と一緒に剣士の男も来ているが、 口を挟もうとする様子は伺えない。 |
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| いい話?今の話に良いと思える点なんて無かっただろう。 | |
| サーカスの舞台で日給が出るんですよ!? しかも都合のいい時に!歩合制で! |
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| それで? | |
| 給料があれば自給自足に頼らなくていいですし、 宿の周りは交通面も良くて利便性が高いです! |
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| それだけか。 | |
| そっ……。や、宿は3食ご飯付きです! | |
| 全く持って魅力的じゃ無いな。 お前、馬鹿だろう。 |
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| ちょっ、馬鹿ってなんですか!? こっちは真剣に考えてるんですよ!? アナタも少しは真面目に考えてくださいよ! |
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| オマエは俺の今の生活を見下している様だが 俺が嫌々この生活をしてると思ってるのか? とんだお門違いだな。 |
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| みっ……!?見下してなんか無いでしょう!? 何処に見下してる要素があったんですか! |
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| 自給自足に頼る人生は嫌いか。 自炊をする事は滑稽か? |
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| え、あっ。 あのごめんなさい、そういうつもりじゃ。 |
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| じゃあどういうつもりなんだ? それはオマエの主観であって俺の立場に合ってないだろう。 馬鹿以外どう表現すればいいのか分からないな。 |
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| そ……。 女は何かを言いかけるも苦々しく口を噤んだ。 反論をしようとしたが返す言葉が見つからなかった様である。 ……ごめんなさい。考えが足りませんでした。 |
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| そもそもその条件に惹かれたとして 冒険者になる理由にはならないだろう。 とんだ空回りだな。 |
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| ぐ……。 そう、ですね……。 |
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| もう分かったな。俺は冒険者にはならない。 用件がそれだけなら帰ってくれ。 目つきの鋭い男はそう言うとチシミアの横を通り抜けようとした。 |
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| が、黙っていた男がそれを止めるように発言をした。 冒険者は依頼によっては報酬が弾む。 それはお前の糧にはならないのか? |
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| ラ、ラック? | |
| その発言に目つきの鋭い男は足を止めると 訝しげな表情をラックに向けた。 じゃあ聞くが、その弾んだ報酬を お前らは受け取った経験があるのか? |
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| 今はまだ無いが、戦力を揃えれば可能なはずだ。 お前が入ればそれに一歩近づく。そうだろ? 茶髪の男はそう返すと確認する様に女に同意を求めた。 説得をしているにも関わらず表情は無のままである。 |
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| そ、そうですね。確実に近づくと思います。 少なくとも、他の助けはいらなくなるでしょうし。 女は突如発せられた男の言葉に戸惑いながらもそう言った。 |
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| ……前衛2人だと助けが必要になるのか。 独り言の様にそう呟く男からはいつの間にか苛立ちが消えており どうやら冒険者になる話を真剣に考え始めているようである。 お前らの方針は? |
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| ほ、方針ですか?方針って何の……。 | |
| 依頼は利益が出そうな奴だけ受けてるな。 人助けは度外視だ。 |
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| ちょ、ラック!? | |
| ……無理やりパーティに入れるんだから 俺の分け前は多く見積もって当然だな? |
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| え、ああ、ええ。できる範囲で善処しますけど。 え?今の返答プラスだったんですか? |
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| うちの宿は総じてそんな奴ばかりだ。 お前が依頼を選べば助かる命も増えるだろう。 |
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| ちょ、私たちが極悪非道なみたいな言い方じゃないですか! 仕方なく見送る依頼があるってだけですよ!? こっちも生活が懸かっ……。せ、戦力が足りないせいです! |
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| つまり、俺の意見も依頼の決定や方針を左右できる訳だな? | |
| ああ。俺は一人で何かを決められる程要領が良くないからな。 チシミアの独断に頼っているとこの先躓く事もあるだろう。 お前の頭を借りれると助かる。 |
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| ……お前もそれで異論は無いか? 男は淡々と返された言葉を表情を変えず聞き終わると 同じく黙って聞いていた女に対しそう聞いた。 |
|
| え、ええ。無茶な話でなければ受け入れますけど……。 え?まさか本当に仲間になってくれるんですか? |
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| サーカスの件込みでだ。嘘は無いな? | |
| えっ!あっ、ホントですか!? ちゃんと交渉してきました!嘘じゃないです! |
|
| 力量も見せてないのによくその交渉が通ったな。 顔見せの日程指定は? |
|
| あ、いえ。勧誘がちゃんとできるか分からなかったので その辺りはまだ何も決めてないです。 凄腕の狩人が来たら日雇いしてくれるかどうかを聞いただけで。 |
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| ……お前も、俺の腕を見ずによくもまあそんな事が言えたな。 | |
| こっ、こっちだって必死だったんですよ! ……え、ラックからそう聞いたんですけどまさか違うんですか? |
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| それを当人に聞くか? ベストは尽くすが、駄目だったらこの話は無しだな。 |
|
| ぐっ……。 た、頼みますよ!困るんですから! |
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| 数日中にお前らの宿に出向く。 それまでに日程と内容を聞いておけ。 とんでもない交渉をしたオマエなら楽勝だな? |
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| とっ。それ、褒め言葉として受け取っていいんですよね? それぐらいなら朝飯前です。 |
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| 別にどう取ろうが構わないが。宿の名前は? | |
| 奇飛亭だ。依頼で宿を空けてる事もあるかもしれないが、 受けるのを止める訳にも行かないからな。 その時は待ってもらえると助かる。 |
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| 分かった。他には特に無いか? | |
| あ。 女は疑問を受けると しまったと言わんばかりの焦りの色を浮かべながら短く声を上げた。 |
|
| 何だ。 | |
| いえ、あの。言い忘れてたなって思って。 些細な事だと思うんですけど……。 そう言いながら女の視線は空を彷徨っており 見るからに動揺している様子である。 |
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| 明らかに些細な事じゃ無さそうな言い振りだな? | |
| そ、いや。さ、最悪割り振りを変えれば大丈夫ですよね。 背に腹はかえられないですし。 |
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| 割り振り?何の話だ。 | |
| ああ、部屋の事か。あいにく空きが無くてな。 3人で2部屋を使わなきゃならないんだがいいか? |
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| ああ、そんな事か。 部屋を見てみないことには何とも言えないが、問題ない。 |
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| ほ、ホントですか!ああ良かったです。 ええと、それ以外に伝え漏れは無いはずです。 というか、本当に良いんですか?冒険者になるの。 散々勧誘しておいて何なんですけど。 |
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| ああ、気が変わった。前言撤回する。 | |
| そ、そうですか。イマイチ理由が分からないですけど、 それじゃあ宜しくお願いします。 あ、自己紹介まだでしたっけ。チシミア・パンクルエルです。 |
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| 改めて言うが俺はラックだ。苗字は必要あるか? | |
| ひとまず合否判定の間だけだ、無駄に情報を教える必要は無いな。 俺はカパッサ。話が終わったならひとまず帰ってくれるか。 |
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| ……ちょっと言葉が変わるだけで随分印象が違いますね。 何と言うか、普通に会話ができそうで安心しました。 日程と内容の話を聞いて待ってますね、カパッサさん。 |
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| あまり馴れ馴れしくされても困るが。 精々期待しておくんだな。 男はそう言い放つと先ほど向かおうとしていた山ではなく 小屋の中へと消えていった。 |
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| 消え行く男をその場で見届けた女は 帰路へと足を向け嬉しそうに笑みを浮かべた。 ふふ、これで仲間を一人確保! 途中完全に駄目かと思ったけど、ラックに助けられました。 手を思いついてたなら言ってくれても良かったのに。 |
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| 女の後を追い横に並んだ男は言葉を受けやや不思議そうな顔をした。 ん?いや、特に考えてた訳じゃ無かったからな。 まさか説得できるとは思ってなかった。 |
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| え、またまた。 知り合いだから考え方が分かったんでしょう? |
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| そこまであいつの事を理解している訳じゃないんだが。 まあ、あの腕なら合格するだろう。 メンバーが増えて良かったな。 |
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| ……あのラック。 今更なんだけど。カパッサとは面識が深いのよ、ね? 一抹の不安を覚えたのか バンダナの女はやや焦りながらそう確認した。 |
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| そして男はそれを的中させる様にあっけらかんとこう述べる。 いや?片手で数えられる程度しか会っていないが。 それがどうかしたか? |
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| え、えええ!? ちょっ、ええ!?あの人の勧めで冒険者になったんじゃ無いの!? |
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| それは事実だが。何か問題でもあったか? | |
| え、いや、ええ……!? ちょっ、じゃあ弓の腕は……あっ、やっぱりいい!聞きたくない! |
|
| そうか?それなら良いが。 | |
| こっ、こっちは良くないわよ……! 不安材料だらけじゃない!聞くんじゃなかった……! |
|
| そうか。悪かった。 | |
| 気持ちのこもってない謝罪はいらないわよ! ああもう!早く宿に帰って依頼探さなきゃ……! |
|
| ああ、そうだな。走るか。 男はそう言うと返事も聞かずに走り始めた。 |
|
| えっ!?あっちょっ、ラック!? ちょっ。もーーー!!何なのーー!? 女は叫んだものの男は既に呼び止められる距離には無く 後を追うように走って行った。 |
|
| その後無事カパッサは合格を得て仲間入りする事になるのだが それはまた、別の話である。 |
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