奇飛の追憶の過去自部隊会話ログとか過去の話とかぼちぼちと。
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過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘3
| 俺は冒険者になる気は無い。何度も言わせるな。 | |
| そっ……即答しなくたって良いじゃないですか! 少しは考えてみてくださいよ!良い話でしょう!? |
|
| 太陽が注ぐ寂れた小屋の前で女の声が響き渡った。 日を改めやって来たものの、新しい提案も無下にされた様である。 女と一緒に剣士の男も来ているが、 口を挟もうとする様子は伺えない。 |
|
| いい話?今の話に良いと思える点なんて無かっただろう。 | |
| サーカスの舞台で日給が出るんですよ!? しかも都合のいい時に!歩合制で! |
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| それで? | |
| 給料があれば自給自足に頼らなくていいですし、 宿の周りは交通面も良くて利便性が高いです! |
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| それだけか。 | |
| そっ……。や、宿は3食ご飯付きです! | |
| 全く持って魅力的じゃ無いな。 お前、馬鹿だろう。 |
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| ちょっ、馬鹿ってなんですか!? こっちは真剣に考えてるんですよ!? アナタも少しは真面目に考えてくださいよ! |
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| オマエは俺の今の生活を見下している様だが 俺が嫌々この生活をしてると思ってるのか? とんだお門違いだな。 |
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| みっ……!?見下してなんか無いでしょう!? 何処に見下してる要素があったんですか! |
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| 自給自足に頼る人生は嫌いか。 自炊をする事は滑稽か? |
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| え、あっ。 あのごめんなさい、そういうつもりじゃ。 |
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| じゃあどういうつもりなんだ? それはオマエの主観であって俺の立場に合ってないだろう。 馬鹿以外どう表現すればいいのか分からないな。 |
|
| そ……。 女は何かを言いかけるも苦々しく口を噤んだ。 反論をしようとしたが返す言葉が見つからなかった様である。 ……ごめんなさい。考えが足りませんでした。 |
|
| そもそもその条件に惹かれたとして 冒険者になる理由にはならないだろう。 とんだ空回りだな。 |
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| ぐ……。 そう、ですね……。 |
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| もう分かったな。俺は冒険者にはならない。 用件がそれだけなら帰ってくれ。 目つきの鋭い男はそう言うとチシミアの横を通り抜けようとした。 |
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| が、黙っていた男がそれを止めるように発言をした。 冒険者は依頼によっては報酬が弾む。 それはお前の糧にはならないのか? |
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| ラ、ラック? | |
| その発言に目つきの鋭い男は足を止めると 訝しげな表情をラックに向けた。 じゃあ聞くが、その弾んだ報酬を お前らは受け取った経験があるのか? |
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| 今はまだ無いが、戦力を揃えれば可能なはずだ。 お前が入ればそれに一歩近づく。そうだろ? 茶髪の男はそう返すと確認する様に女に同意を求めた。 説得をしているにも関わらず表情は無のままである。 |
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| そ、そうですね。確実に近づくと思います。 少なくとも、他の助けはいらなくなるでしょうし。 女は突如発せられた男の言葉に戸惑いながらもそう言った。 |
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| ……前衛2人だと助けが必要になるのか。 独り言の様にそう呟く男からはいつの間にか苛立ちが消えており どうやら冒険者になる話を真剣に考え始めているようである。 お前らの方針は? |
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| ほ、方針ですか?方針って何の……。 | |
| 依頼は利益が出そうな奴だけ受けてるな。 人助けは度外視だ。 |
|
| ちょ、ラック!? | |
| ……無理やりパーティに入れるんだから 俺の分け前は多く見積もって当然だな? |
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| え、ああ、ええ。できる範囲で善処しますけど。 え?今の返答プラスだったんですか? |
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| うちの宿は総じてそんな奴ばかりだ。 お前が依頼を選べば助かる命も増えるだろう。 |
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| ちょ、私たちが極悪非道なみたいな言い方じゃないですか! 仕方なく見送る依頼があるってだけですよ!? こっちも生活が懸かっ……。せ、戦力が足りないせいです! |
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| つまり、俺の意見も依頼の決定や方針を左右できる訳だな? | |
| ああ。俺は一人で何かを決められる程要領が良くないからな。 チシミアの独断に頼っているとこの先躓く事もあるだろう。 お前の頭を借りれると助かる。 |
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| ……お前もそれで異論は無いか? 男は淡々と返された言葉を表情を変えず聞き終わると 同じく黙って聞いていた女に対しそう聞いた。 |
|
| え、ええ。無茶な話でなければ受け入れますけど……。 え?まさか本当に仲間になってくれるんですか? |
|
| サーカスの件込みでだ。嘘は無いな? | |
| えっ!あっ、ホントですか!? ちゃんと交渉してきました!嘘じゃないです! |
|
| 力量も見せてないのによくその交渉が通ったな。 顔見せの日程指定は? |
|
| あ、いえ。勧誘がちゃんとできるか分からなかったので その辺りはまだ何も決めてないです。 凄腕の狩人が来たら日雇いしてくれるかどうかを聞いただけで。 |
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| ……お前も、俺の腕を見ずによくもまあそんな事が言えたな。 | |
| こっ、こっちだって必死だったんですよ! ……え、ラックからそう聞いたんですけどまさか違うんですか? |
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| それを当人に聞くか? ベストは尽くすが、駄目だったらこの話は無しだな。 |
|
| ぐっ……。 た、頼みますよ!困るんですから! |
|
| 数日中にお前らの宿に出向く。 それまでに日程と内容を聞いておけ。 とんでもない交渉をしたオマエなら楽勝だな? |
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| とっ。それ、褒め言葉として受け取っていいんですよね? それぐらいなら朝飯前です。 |
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| 別にどう取ろうが構わないが。宿の名前は? | |
| 奇飛亭だ。依頼で宿を空けてる事もあるかもしれないが、 受けるのを止める訳にも行かないからな。 その時は待ってもらえると助かる。 |
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| 分かった。他には特に無いか? | |
| あ。 女は疑問を受けると しまったと言わんばかりの焦りの色を浮かべながら短く声を上げた。 |
|
| 何だ。 | |
| いえ、あの。言い忘れてたなって思って。 些細な事だと思うんですけど……。 そう言いながら女の視線は空を彷徨っており 見るからに動揺している様子である。 |
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| 明らかに些細な事じゃ無さそうな言い振りだな? | |
| そ、いや。さ、最悪割り振りを変えれば大丈夫ですよね。 背に腹はかえられないですし。 |
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| 割り振り?何の話だ。 | |
| ああ、部屋の事か。あいにく空きが無くてな。 3人で2部屋を使わなきゃならないんだがいいか? |
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| ああ、そんな事か。 部屋を見てみないことには何とも言えないが、問題ない。 |
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| ほ、ホントですか!ああ良かったです。 ええと、それ以外に伝え漏れは無いはずです。 というか、本当に良いんですか?冒険者になるの。 散々勧誘しておいて何なんですけど。 |
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| ああ、気が変わった。前言撤回する。 | |
| そ、そうですか。イマイチ理由が分からないですけど、 それじゃあ宜しくお願いします。 あ、自己紹介まだでしたっけ。チシミア・パンクルエルです。 |
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| 改めて言うが俺はラックだ。苗字は必要あるか? | |
| ひとまず合否判定の間だけだ、無駄に情報を教える必要は無いな。 俺はカパッサ。話が終わったならひとまず帰ってくれるか。 |
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| ……ちょっと言葉が変わるだけで随分印象が違いますね。 何と言うか、普通に会話ができそうで安心しました。 日程と内容の話を聞いて待ってますね、カパッサさん。 |
|
| あまり馴れ馴れしくされても困るが。 精々期待しておくんだな。 男はそう言い放つと先ほど向かおうとしていた山ではなく 小屋の中へと消えていった。 |
|
| 消え行く男をその場で見届けた女は 帰路へと足を向け嬉しそうに笑みを浮かべた。 ふふ、これで仲間を一人確保! 途中完全に駄目かと思ったけど、ラックに助けられました。 手を思いついてたなら言ってくれても良かったのに。 |
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| 女の後を追い横に並んだ男は言葉を受けやや不思議そうな顔をした。 ん?いや、特に考えてた訳じゃ無かったからな。 まさか説得できるとは思ってなかった。 |
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| え、またまた。 知り合いだから考え方が分かったんでしょう? |
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| そこまであいつの事を理解している訳じゃないんだが。 まあ、あの腕なら合格するだろう。 メンバーが増えて良かったな。 |
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| ……あのラック。 今更なんだけど。カパッサとは面識が深いのよ、ね? 一抹の不安を覚えたのか バンダナの女はやや焦りながらそう確認した。 |
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| そして男はそれを的中させる様にあっけらかんとこう述べる。 いや?片手で数えられる程度しか会っていないが。 それがどうかしたか? |
|
| え、えええ!? ちょっ、ええ!?あの人の勧めで冒険者になったんじゃ無いの!? |
|
| それは事実だが。何か問題でもあったか? | |
| え、いや、ええ……!? ちょっ、じゃあ弓の腕は……あっ、やっぱりいい!聞きたくない! |
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| そうか?それなら良いが。 | |
| こっ、こっちは良くないわよ……! 不安材料だらけじゃない!聞くんじゃなかった……! |
|
| そうか。悪かった。 | |
| 気持ちのこもってない謝罪はいらないわよ! ああもう!早く宿に帰って依頼探さなきゃ……! |
|
| ああ、そうだな。走るか。 男はそう言うと返事も聞かずに走り始めた。 |
|
| えっ!?あっちょっ、ラック!? ちょっ。もーーー!!何なのーー!? 女は叫んだものの男は既に呼び止められる距離には無く 後を追うように走って行った。 |
|
| その後無事カパッサは合格を得て仲間入りする事になるのだが それはまた、別の話である。 |
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17期:反映・切替・閉め会話
反映会話1:手土産/パン サマロ チシミア
******************************
周りに流されていたばかりだったサマロが自立していっている。
反映会話3:手土産/ワラスボ サマロ ラック
******************************
前期ラストのクラリエントとのやりとりに少し関わる話。
死んだ生き物を直視できなかったサマロがそれを克服している。
切替1 サマロ
閉め会話1:天幕内/もてなし後 サマロ シリール
******************************
こちらに来てから単独で言葉を交わす知り合いも増えてきた。
カパッサに対しての隠し事も、増えてゆく。
切替2 クラリエント
| 一つの天幕にやや小ぶりな紙袋を持って佇む少女の姿がある。 紙袋から放たれているのか周囲には香ばしい匂いが漂っており、 少女はその袋に描かれている店名と思わしきロゴをぼんやりと見つめている。 |
|
| そこにバンダナをつけた女が現れると 少女と紙袋を見て口を開いた。 ああ、やっぱりそれ手土産だったんですか。 何が入ってるんです? |
|
| 橙の髪をした少女は声の主にゆっくりと視線を向けると 相手の質問を聞いた後返答もせずにゆっくりと紙袋を開けた。 クロワッサン……。 中には複数の三日月型のパンが見える。 |
|
| バンダナの女は横から中身を覗くと嬉しそうな顔をした。 へえ、いつもながら美味しそうですね。 今食べるなら紅茶淹れましょうか? |
|
| あ、えっと……。大丈夫、です。 提案を受け少女は暫しの間考え込むと、 緊張した面持ちでそう返答をした。 |
|
| じゃあ、後でみなさんが帰ってきたら分けて食べましょうか。 あ。もしかして紅茶が無くても良いって意味でした? |
|
| あ、その。えっと……。 少女は視線を下にしながら言葉を詰まらせると 掌を握り締め、再び真剣な面持ちで相手と目を合わせた。 自分で、淹れ、ます。 |
|
| その言葉を聞いた女は余程意外であったのか目を見開き固まったが すぐに柔らかな笑みを浮べた。 分かりました。じゃあ、上手く淹れられるように教えますね。 私もあんまり上手な方では無いですけど。 |
|
| お願い、します。 おずおずとそう返した少女の顔には既に不安の色は消えており その声色からは少しの期待と相手に対する羨望が感じ取れる様であった。 |
|
| そうしてレクチャーを受けながら少女は何とか紅茶を淹れると 冷めてしまったパンをバンダナの女と共に堪能したのであった。 |
******************************
周りに流されていたばかりだったサマロが自立していっている。
反映会話3:手土産/ワラスボ サマロ ラック
| 日は変わり、天幕の中に座り込む少女の姿がある。 傍らには長い魚が1匹調理もされずに乗せられた皿があり、 少女はただひたすらに動かぬその魚をじっと見つめている。 |
|
| そこへ一人の茶髪の男が現れると少女に対して声をかけた。 ああ、サマロが居たのか。 |
|
| あ……。 えっと。おかえり、なさい。ラック。 少女は名を呼ばれ顔を向けた後、 対面するように座り直し相手を出迎えた。 |
|
| 外に誰も居なかったが、見張っていた方がいいか? 男は出迎えに対しての返答はせずにそう聞いた。 淡々と発せられたそれは単なる確認の為であり 特に咎めるといった事では無いようである。 |
|
| 少女は男の言葉を聞き何かを思い出したのかおろおろし始めた。 あっ。えっと、その。 い、行き、ます。ごめん、なさい。 どうやら見張りは彼女の任であったらしい。 |
|
| 慌てる相手に対して男は特に顔色を変える事もなく口を開いた。 俺は別に構わないが。 その魚を見ていたのか? |
|
| あ、えっと……。 少女は立ち上がろうとしたが問いを受け魚に視線を向けた。 ギルドの、人から。もらいました。 その。揚げると、いい。らしいです。 |
|
| そうなのか。 求めていた返答では無かったのか、元々さして興味が無かったのか 男は無表情でそう相槌をした。 |
|
| そう、です。 少女は眉一つ動かさない男に特に反応もせず 頷きながらそう言葉を返した。 |
|
| そのまま会話は終わるかに思えたが、 男は何かを思い出したように声を出した。 ……ん?おまえ、前は死んだ魚を嫌がってなかったか? そのままで見ても平気になったのか。 |
|
| あ、えっと。もう。へいき、です。 つよく、なります。 少女は途切れ途切れではあるが落ち着いた様子ではっきりとそう告げた。 |
|
| そうか。俺にはよく分からないが、 お前がそう言えるのなら良い事なんだろう。 |
|
| はい。良かった、です。 頑張り、ます。 |
|
| ああ、良かったな。 | |
| はい……。 少女は男の言葉に呆けている様にも見える表情でこくこくと頷くと 突如ハッとした顔に変わった。 えっと、見張り、してきます。 |
|
| ん?ああ、分かった。 何かあったら呼んでくれ。 |
|
| ありがとう、ございます。 少女は今度こそ立ち上がってそう言うと 男の横を通り抜けて天幕の外へ出て行った。 |
|
| そうして残された男は去りゆく彼女を見届けると何をする訳でもなく、 皿に乗った魚をただ眺めるのであった。 |
******************************
前期ラストのクラリエントとのやりとりに少し関わる話。
死んだ生き物を直視できなかったサマロがそれを克服している。
切替1 サマロ
| 天幕の外で、一人の少女が佇んでいる。 何処か遠くを眺めるだけで特に何もせず、見張りをしている様である。 |
閉め会話1:天幕内/もてなし後 サマロ シリール
| 少女は手を振りかえすと相手の言葉に頷きで返答し 去っていく姿をゆっくりと眺めた。 |
|
| そこに少ししてローブを着た女がゆっくりと顔を覗かせると 少女を見て口を開いた。 また中に居たのね。 |
|
| 少女は女の言葉にハッとすると自分の役目を思い出したのか その場で目を泳がせた。 あっ。ご、ごめんな、さい。 |
|
| 別に良いけれど。誰か来ていたの? | |
| えっと、はい。来て、ました。 | |
| ……髪が乱れているわ。 誰だかは聞かないけれど、カパッサが来る前に整えておくのね。 ローブの女は少女を眺めて眉をしかめるとそのままの位置でそう告げ、 返事を聞くこともなく立ち去って行った。 |
|
| あっ……。 少女は指摘にたじろぐと女を止める事もなく慌てて髪を直し、 他にも変な部分が無いかと全身を見回し始めた。 |
|
| その後万全の準備を整えたものの 隠し事の出来ない彼女は来客の事を話す事になったのだが それはまた、別の話である。 |
******************************
こちらに来てから単独で言葉を交わす知り合いも増えてきた。
カパッサに対しての隠し事も、増えてゆく。
切替2 クラリエント
| 日は変わって、天幕の外には椅子に腰掛け本を読む男が一人いた。 夜が明けたばかりで辺りはやや薄暗く静まり返っており、 本を読む男の表情も真剣さは無いものの落ち着いている様である。 |
17期重要会話:サマロとクラリエント 遠くで見守る想いは
反映会話0:挨拶回り サマロ クラリエント
******************************
一歩一歩自立の道を歩んでいくサマロとそれを見守るクラリエント。いつもの光景。
サマロが自分一人で他者と対面するのは前期にもあったので
クラリエントはあまり心配もしていない。
| 聖国内のとある一角、一つの部隊の拠点に続く道に人の姿がある。 幼さの残る少女とやや細身の男のその2人は並んで歩き、 どうやら目先に見える拠点に向かっている様である。 |
|
| 拠点が近くなると金髪の男は足を止め、少女に対し声を掛ける。 いいですか、付き添いますが今期のリーダーはあなたです。 遠くで見ていますから助力を求めず一人で挨拶をするのですよ。 |
|
| は、い。頑張り、ます。 少女は男の言葉をしっかりと聞き強く頷いた。 |
|
| 言う内容は覚えていますか。 | |
| えっと。部隊名、と。自分の名前、と。 リーダーが、変わって。宜しくお願い、します。 |
|
| ええ、そうです。褒め言葉も忘れずに言うのですよ。 いけそうですか? |
|
| は、い。大丈夫、です。 | |
| ええ。期待しています。 危ない目になりそうな時は間に入りますので。 皆さん理解のある方なのでそうそう無いとは思いますが。 |
|
| 分かり、ました。 | |
| 相手の名前は聞かなくても覚えていますね? | |
| えっと。大丈夫、です。 その。とっても、お世話に。なったので。 |
|
| それなら結構です。では、どうぞ。 | |
| 少女は男の言葉に頷くと しっかりとした足取りで進みだした。 |
|
| その姿を見送る男は心配の色も見せず どことなく誇らしげにも見える。 |
|
| その後無事初めてのリーダーとしての仕事を終えた彼女は 自信をつけ他の部隊の元へも挨拶に行くのであった。 |
******************************
一歩一歩自立の道を歩んでいくサマロとそれを見守るクラリエント。いつもの光景。
サマロが自分一人で他者と対面するのは前期にもあったので
クラリエントはあまり心配もしていない。
17期初期会話:シリールとチシミア/クラリエントとカパッサ 呼ばれた名の意味は
前期終了反映:RP中途終了 シリール チシミア
******************************
個々により記憶の保持が変わる事の強調。
シリールは巡りが変わった事を感じクラリエントを探しに行っているが
チシミアは何が何だかさっぱり分かっていない。
リーダー交代:サマロ / クラリエント カパッサ
******************************
サマロをリーダーにしたのはサマロの自立の為にクラリエントが下した選択だが
彼自身にも大きな責任が問われるのは間違いなく、本人も自覚している。
ここに来る以前よりサマロに対してのクラリエントのテコ入れは何度かあったが
今回の件は遥かに負担が大きく、カパッサも耐えかねる様子を見せている。
カパッサの「今からでも考え直せ」という発言は「お前の発言は絶対だ」という意味でもあり
クラリエントの発言を打ち破る力が自分に無いと認めているという事。
いつもはしない名前を呼ぶ行為もあり、クラリエントを信用している所があるのが伺える。
| これから再生される物語は、ここにいる彼らに繋がる さして遠くない過去の会話である。 |
|
| 一つの天幕の中でローブを着た女が腰を下ろしている。 空虚を見つめていたが暫しの後ハッとすると 顔を顰めゆっくりと辺りを見回し始めた。 |
|
| そこへバンダナをつけた女が慌しく入ってくると 焦りの色を見せながら元居た女に話しかけた。 シリールさん、私今人と話してませんでした? |
|
| ……そう。あなたは人と話していたのね。 ローブの女は唐突に疑問を投げかける相手に対し 表情一つ変えずにそう答えた。 |
|
| え、はあ……? そ、そうですよね。外で会話してたら聞こえませんよね。 女は答えになっていない返答に戸惑いを見せた後 納得するようにそう言ったが、表情は依然として曇ったままである。 |
|
| ねえ、今は何年の何月かしら。 女は相手の目を見るとお返しとばかりにそう聞いた。 どうやら会話の流れを意識するつもりは無い様である。 |
|
| え、暦ですか? ええと……。あれ? バンダナの女は唐突な問いに対し不機嫌な顔もせずに答えようとしたが 思い出せない様で困惑の表情を見せた。 いや、そもそもシリールさん覚えてないんですか? |
|
| ローブの女は答える事のできない目の前の相手に対し目を細めると、 続く言葉に視線を逸らし口を開いた。 そう。そうね。 確認しなければいけないわ。 |
|
| 確認、ですか? | |
| ええ。クラリエントを探してくるわ。 そう言うとローブの女は天幕から足早に出て行った。 |
|
| あっ、えっ? ちょっちょっとシリールさん!? え……。ええ……? |
|
| そうして取り残されたバンダナの女は後を追うこともせず ただただ呆然と立ち尽くすのであった。 |
******************************
個々により記憶の保持が変わる事の強調。
シリールは巡りが変わった事を感じクラリエントを探しに行っているが
チシミアは何が何だかさっぱり分かっていない。
リーダー交代:サマロ / クラリエント カパッサ
| これより再生される物語は、先ほどから数日経った とある日の出来事である。 |
|
| 一つの天幕の中に男の姿がある。 周囲には物が広げられており、荷物整理をしている様だ。 |
|
| そこに目つきの鋭い男が入ってくると もの凄い剣幕で男に近寄って来た。 おい!どういう事だ! |
|
| 金髪の男は怒鳴りつけてきた相手に対しさして驚く事も無く、 視線を合わせると呆れるような表情で口を開いた。 来ると思っていましたが。リーダー交代の件でしょう? 順番に回るのですから彼女であっても可笑しくはないハズですが。 |
|
| 変えろ、無謀すぎる。 オマエにだって分かるだろう。 サマロは一人じゃ陣営にも戻って来れないんだぞ!? |
|
| ええ、そうですね。 そうさせたまま甘やかして放置しているのは誰ですか? 今彼女に必要なのはもっと厳しい選択だと思いますが。 それとも、アナタが彼女の代わりを務めるとでも? |
|
| だからっていきなりコレは無いだろう!? 今からでも考え直せ、クラリエント! |
|
| 金髪の男は相手の発言に合わせていた目を一瞬見開くもすぐ戻すと 再び荷物に視線を落とした。 ……彼女が泣きついてきたなら考えますよ。 この件は彼女の承諾を得て成立しているものですので、 まずは彼女を説得する事ですね。 |
|
| ……チッ。 | |
| 茶髪の男は心底忌々しそうに舌打ちをすると 身を翻して天幕の外へと出て行った。 |
|
| 残された男は相手が出て行った事を確認すると 目を細め一人言葉を紡ぎだした。 ……怒りの最中私の名を呼ぶとは。 あの人は一体、私に何を期待しているのでしょうか。 |
|
| 男はそう呟くと動かしていた手を止め その人物が消えていった出入り口を暫し眺めるのであった。 |
******************************
サマロをリーダーにしたのはサマロの自立の為にクラリエントが下した選択だが
彼自身にも大きな責任が問われるのは間違いなく、本人も自覚している。
ここに来る以前よりサマロに対してのクラリエントのテコ入れは何度かあったが
今回の件は遥かに負担が大きく、カパッサも耐えかねる様子を見せている。
カパッサの「今からでも考え直せ」という発言は「お前の発言は絶対だ」という意味でもあり
クラリエントの発言を打ち破る力が自分に無いと認めているという事。
いつもはしない名前を呼ぶ行為もあり、クラリエントを信用している所があるのが伺える。
16期重要会話:サマロとクラリエント 生と死を見つめ
反映会話8:イベント帰還/催し サマロ クラリエント
******************************
サマロがリーダーの職務に耐えうるだけの強さを得ているか確認する問答。
途中彼が目を逸らすのは演技ではなく自然に出たしぐさ。
死と相対する恐怖が強いサマロを戦場に永続的に出せるかを計っている。
「私、だけじゃ……。クラリエントさん、も。」は
「身内が死んだのは私だけじゃなくてクラリエントさんもなのに」という意味。
| 日は変わって、一人の少女が一つの天幕の中でぼんやりしている。 周囲には特別何かをしていた様子も無く、ただ単に暇な様である。 |
|
| そこへ一人の男が顔を覗かせると少女に声をかけた。 サマロさん、面白いものを持って参りましたよ。 |
|
| あ、面白い、もの……? 少女は声をかけてきた男に目を向けると首を傾げながらオウム返しをした。 |
|
| ええ、外へどうぞ。 | |
| ……? | |
| 少女が男に続いて外に出ると大きい魚の入った袋が 天幕の一部に括り付けられ宙に浮いていた。 袋は水までたっぷり入っているにも関わらず 風船のようにふわふわと不思議な動きを見せている。 |
|
| 突如目の前に現れた不可思議な光景に声をあげる事も無く 少女は口を開きながら無言でその物体を見つめた。 |
|
| 帝国の方で祭りをやっていましてね。 あいにく食べられるものでは無い様なのですが、 こうしておけば魔よけ程度にはなるかもしれませんね。 |
|
| これ、生きてるん、ですか? | |
| ええ。放す事も考えたのですが 元の生息地が少し危険な場所の様でして。 別の所にすると生態系を壊しかねませんし、仕方がありませんね。 |
|
| そう、なんですか。 | |
| このままですと水の入れ替えができませんので 何れは息絶えてしまうでしょうが……。 お嫌でしたら目に付かない所に変えますが、どうしますか? |
|
| あ……。 いえ、大丈夫。です。 |
|
| そうですか。 調べて問題なさそうでしたら土葬でもしましょうかね。 |
|
| ……。 クラリエントさんは、こわく、無いですか。 |
|
| 命は等しく何れ消えて無くなるものですよ。 ただ早いか遅いか、というだけです。 |
|
| ……そう、ですか。 | |
| ええ、そうですよ。 | |
| あ……。ごめん、なさい……。 | |
| おや、どうして謝るのです? | |
| 私、だけじゃ……。 クラリエントさん、も。 |
|
| あなたに比べれば、対したものでは無いでしょうに。 お強くなりましたね。 |
|
| つよ、く……? | |
| ええ。それなら大丈夫そうです。 | |
| ……? | |
| また改めてお話いたしますので、 その時はお力をお貸しいただければ幸いですよ。 |
|
| えっと……。はい。 |
******************************
サマロがリーダーの職務に耐えうるだけの強さを得ているか確認する問答。
途中彼が目を逸らすのは演技ではなく自然に出たしぐさ。
死と相対する恐怖が強いサマロを戦場に永続的に出せるかを計っている。
「私、だけじゃ……。クラリエントさん、も。」は
「身内が死んだのは私だけじゃなくてクラリエントさんもなのに」という意味。
16期重要会話:クラリエントとシリール 相違する記憶
反映会話6:他部隊交流/指定呼出 クラリエント シリール
******************************
巡りの知識の会得。信じていた自身の「記憶」が揺らぐ事への不安と焦り。
シリールはリーダーの交代を促すと共に
「交流の多さが記憶の保持に関わるのでは」という仮説を立てている。
| 日は変わり、一つの天幕の中に男の姿がある。 中央のスペースに腰を降ろしてはいるが何をする訳でも無く、 ただただ一点を見つめ何かに集中している様である。 |
|
| その天幕にローブを着た女がやって来ると 男を見つけ呆れた様に口を開いた。 やっぱり居たのね。収穫はどうだったの。 |
|
| 声をかけられた男はハッとし相手を見ると スイッチを切り替えたかのようににこやかな表情を浮べた。 ああ、シリールさん。 すみません、少し整理してからお話しようと思っていたもので。 今ここで聞いていかれますか? |
|
| ……自部隊の天幕だからって安心してると寝首を掻かれるわよ。 外から声をかけたのに聞こえてないのね。 そこまで頭を抱えるような話だったということかしら。 女は怒りも焦りも見せずに男を見ながらそう淡々と言った。 |
|
| 男は女の言葉に驚くと苦渋の色を浮かべ やや動揺した様子で口を開いた。 ……すみません。そこまで没頭していたとは思わなかったのですが。 |
|
| 別に良いけれど。 結果だけでも教えてくれないかしら。 |
|
| ……この世界は刻碑暦997年9月から 刻碑暦1000年3月までの2年半を延々と廻っているようなのです。 私たちは既に二度、巡りと呼ばれるそれを越えていたそうです。 記憶の継承については個人差が色々とあるようですが……。 私たちが 997年の4月 にこちらに来てから記憶上は繋がっていますが 出来事は全て分断されているものである様です。 |
|
| 女は男の発言をしばし無表情で聞いていたが、 終わりで発せられた言葉を聞くや否や不快そうに顔を顰めた。 今、何て言ったのかしら。 私たちがここへ来たのは 999年の4月 よ? あなたまさか本気で言っているの? |
|
| 999年の 、4月……? 男は打って変わって余裕を失った表情でオウム返しをすると 口を閉ざし目を彷徨わせ始めた。 それは察するに記憶を辿っているようだったが一向に口を開く様子も無く、 表情はどんどんと険しくなるばかりである。 |
|
| ……それだけ考えてダメだと言うのなら、 その巡りとやらの影響を受けていると考えるべきね。 最も、私の言っている方が間違いだと言うのなら話は別だけれど。 |
|
| いえ、ここに来た時の事はもうほとんどがおぼろげなのです。 あなたがハッキリと覚えていると言うなら、それが真実だと思います。 男は相手と目を合わせる事も無く、弱弱しい口調でそう告げた。 |
|
| ローブの女は目の前の男の姿に心なしか目を細めると それまでとは少し語気を弱めて語りかけた。 ……あなたは他と交流を持ち過ぎだわ。 繰り返している事が分かったのだから、 リーダーを変えるべきなんじゃないかしら。 |
|
| そう、ですね……。 その方が、良いかもしれません。 男は尚も目を逸らし、歯切れ悪くそう返答した。 |
|
| 何にせよ、情報が確かなら次の巡りまではまだ時間があるのだから その間に打てる対策を準備する事ね。 もっとも、今の貴方に必要なのはその恐怖を捨てることでしょうけど。 |
|
| ……ええ。少し、時間がかかりそうです。 | |
| 女は目を合わせない男を無言で見つめると 相も変わらず無表情で口を開いた。 これ以上の収穫は無さそうだから私は戻るわ。 何かあったら声をかけて頂戴。 |
|
| そう言い残しローブの女が天幕の外へ出て行くと、 残された男は一人疲れたように目を閉じるのであった。 |
******************************
巡りの知識の会得。信じていた自身の「記憶」が揺らぐ事への不安と焦り。
シリールはリーダーの交代を促すと共に
「交流の多さが記憶の保持に関わるのでは」という仮説を立てている。
16期重要会話:サマロとカパッサ/シリールとカパッサ 不安の予兆
反映会話3:イベント出発/狩猟 サマロ カパッサ
反映会話4:イベント帰還/狩猟 シリール カパッサ
| 日は変わって、少女が一人天幕の前で地べたに布を引きちょこんと座っている。 何処となく不安げではあるものの、見張りをしている様である。 |
|
| そこへ弓を携えた男が一枚のチラシを片手に 急ぐ様子も無く少女の元へやってきた。 |
|
| あ……!おかえり、なさい。カパッサ。 少女は男を見るとパッと表情を明るくし立ち上がってそう言った。 笑みこそ見せないものの、声と雰囲気から察するに随分と嬉しそうである。 |
|
| ああ、戻った。 男は対照的に素っ気無い態度でそう言うと 一度目を逸らしてから少し迷う様に口を開いた。 しばらく帝国に行くが、お前も来るか。サマロ。 |
|
| ていこく……? 仲間じゃ、無くなるの? 少女は男の口から出た単語を反芻すると 不安の色を強めそう聞いた。 |
|
| いや、違う。短期滞在をするだけだ。 二週間もすればまた会えるだろう。 男は不安にさせた侘びも無くそう淡々と補足すると 見下ろしたまま真っ直ぐと相手を見つめた。 少し狩りの腕を確かめてくる。付いて来るか。 |
|
| 少女は問いを受け、視線を方々に彷徨わせながらしばし思考すると 胸の前で手をぎゅっと握り締め口を開いた。 私は、大丈夫。すぐ、また会えるなら……。 ここで、待ってる。 |
|
| ……そうか。明日の朝には出発する。 それまでに気が変わったら言え。 男は落胆も安堵も見せずそう言い放つと 返事も聞かずに一つの天幕へと入って行った |
|
| あ……。 少女は去り行く男を引き止める事もできず 姿が消えた天幕を見つめると視線を下に向けた。 カパッサ、私……。 |
|
| 尻すぼみに紡がれた言葉の先が発せられる事は無く、 少女はしばしそのまま立ち尽くすのであった。 |
反映会話4:イベント帰還/狩猟 シリール カパッサ
| 日は変わって、天幕の外にローブを着た女の姿がある。 女は木の椅子に腰掛けながら一人本を読んでおり、 沈みかけた太陽がそのページを赤く照らしている。 |
|
| そこに目つきの鋭い一人の男がゆっくりとやってきた。 身なりは多少汚れてはいるものの、その表情に疲労の色は見えない。 |
|
| ……あら、帰ってきたのね。 女は男に気づくも本を閉じる事はせず、そのままの体勢で男に言葉をかけた。 そこに落胆や喜びと言った感情は見えず、 男の帰還自体に然程興味は無いようである。 |
|
| サマロは無事か。 男は女の声かけに答える事は無く、口を開くなりそう言った。 |
|
| ええ。何も無かったわ。 アナタが居なくてももう平気なのね。 女は淡々とそう返答すると視線を本へと戻した。 今は中央の天幕で談笑でも聞いているんじゃないかしら。 |
|
| ……そうか。 男はそう短く返事をすると、 女が示したものとは別の天幕へと消えて行った。 |
|
| ローブの女はその行動をやや驚くような表情で見ていたが、 数秒もしない内にページへと目を落とすとまた続きを読み始めるのであった。 |
16期重要会話:カパッサとクラリエント 予期された対立
反映会話5:他部隊交流/訪問 クラリエント カパッサ
| 日は変わり、小さな天幕の中で男が一人荷物を整理している。 静まり返ってはいるものの、天幕の外には人の気配がある様だ。 |
|
| そこに目つきの鋭い男がやってくると 荷物整理をしている男にやや荒げた声で話しかけた。 おい、お前何か言っただろう。 |
|
| おや、カパッサさんでは無いですか。 どちらへ行かれていたのです?随分と遅かったようですが。 金髪の男は声の主に顔を向けるもすぐに視線を戻し 荒げられた声を気にもせずにそう質問し返した。 |
|
| サマロに一人で別の部隊に行く様に命令しただろう。 何を吹き込んでああした?答えろ。 鋭い目つきの男は尚も敵意を向け苛立った様子でそう言い放った。 険しいその表情は、どことなく殺気を帯びているようにすら見える。 |
|
| 荷物を整理していた男は観念したのか溜息をつくと動かしていた手を止め 殺気立つ男に向き直りやや面倒そうに口を開いた。 ……彼女がやれる事は無いかと申し出て来たので提案したまでですよ。 それを請けて実行したのは彼女です。 私がとやかく言われる筋合いは無いと思いますが。 |
|
| 内気で迷子癖のある年端もいかない女を 一人で得体の知れない部隊に送り込むのはどう考えても異常だろう。 何かあったらお前はどう責任を取るつもりだったんだ。 |
|
| 責任を取るも何も私は彼女の保護者ではありませんからね。 貴方が保護者だと言うのであれば、甘やかしすぎだと思いますが。 そもそも彼女は年の上では幼いとまで言えないでしょうし 異常なのは貴方の方ではないのですか? |
|
| とにかく一人で行かせるのは止めさせろ。 迷子になってからじゃ手遅れだ。 茶髪の男は相手の言葉を受けより一層表情を険しくしてそう言った。 言い返す言葉が見つからないのか、無駄だと思っているのか 投げかけられた問いに対して答えるつもりは無いようである。 |
|
| ……アナタは彼女に何を求めているのです? 己の自分勝手な欲望では無いのですか? 男は先ほどまでの挑発的な態度をやめると 冷めた目つきをしながら相手と視線を合わせそう聞いた。 |
|
| それこそ利用しているのはお前の方だろう。 指図される謂れは無いな。 |
|
| ……ええ。 でしたらそのお言葉、そのまま貴方にお返しいたしますよ。 何かあるのでしたら直接彼女に言う事ですね。 |
|
| ……チッ。 男は不快そうに舌打ちをすると 半ば逃げるように天幕を出て行った。 |
|
| そして残された男はしばししてから 嘆かわしげにこう独りごちるのである。 どちらが正しい道か、 近いうちにハッキリと見せる必要がありますか……。 |
16期:切替・反映・閉め会話
切替 無
反映会話1:手土産/パン シリール クラリエント
反映会話2:手土産/酒瓶(ウイスキー) クラリエント チシミア
切替1 カパッサ
閉め会話1:天幕前 カパッサ クラリエント
切替2 チシミア
反映会話7:イベント参加/採集 シリール チシミア
| これより先に紡がれるのは、今現在の彼らと まだ見ぬ訪問者との終わりの無い物語である。 |
|
| 日は変わり、天幕の外には誰の姿も見えない。 別段何かをしていた様子というものも無く、 小さな木の椅子が端に寂しく置かれているのみである。 |
反映会話1:手土産/パン シリール クラリエント
| 一人の男が箸の天幕から出てくると、 別の天幕に対して呼びかけをした。 シリールさん、パンを貰ったのですがいかがですか。 そう言う男の手には紙袋が携えられていた。 恐らくパンが入っているのであろう。 |
|
| 少ししてローブを着た女が天幕から顔を出すと さして興味も無さそうに口を開いた。 また貰ったの? 戦時中に食べものをやり取りするなんて随分と呑気なものね。 |
|
| それには同意致しますが。この世界では良くある事の様ですし、 貰える物は毒でも貰っておかねば損ですからね。 以前購入してきたお店の方からの差し入れですので、いかがです? あなたも気に入っていた様に見受けましたが。 |
|
| 女は男の発言を聞くと表情を険しくした。 あなた、あれ以外にも通い詰めていたの? |
|
| いえ、私が行ったのはあの一度きりですよ。 好意と取り有り難く食べるか毒害を気にしてやめるかはあなたの自由ですが。 時間が経たない内に食した方が美味しいですからね。どうなさいます? |
|
| ……あなたが食べるのなら、貰うわ。 向こうで食べろというならお断りするけれど。 |
|
| ええ、もちろんここでお渡ししますよ。 ああ。例の方からまた茶葉をいただきましたので そちらもあとで淹れてお持ち致します。 |
|
| そう。今度は違うものかしら。 期待して待っているわ。 |
|
| ええ、ええ。 いつもより丁寧に淹れさせていただきますよ。 |
|
| 男と女は会話を終えるとそれぞれ元居た天幕にもどり また外は無人になるのであった。 |
反映会話2:手土産/酒瓶(ウイスキー) クラリエント チシミア
| 日は変わって、一つの天幕の隅に男が居た。 椅子の無い簡素な机の上に小さめの器を置き、 手に持ったボトルから独特の匂いのする液体を注いでいる。 |
|
| そこにバンダナをした女が現れると 男をギョッとした目で見て固まった。 |
|
| 男は女に気づき手を止めると 尚も驚きの表情を見せる相手に対して平然と話しかけた。 おや、チシミアさんでは無いですか。 どうしたのです?そんな顔をして。 |
|
| あなた、お酒は飲まないんじゃ無かったんですか? 女は驚きながらも辛うじてそう言葉を発した。 どうやら辺りに漂う匂いからそれだと気づいた様だ。 |
|
| ええ、飲みませんよ?以前も言いましたが、 それで悲惨な目に合う人を間近で見ておりましたからね。 太っ腹な方から一本頂いたものですから、香りを楽しもうかと思いまして。 うちの部隊に酒呑みが居れば良かったのですが。 男はそう言いながらボトルの蓋を閉めた。 容器の3分の1程入れられたそれは尚も独特の香りを放っている。 |
|
| ……それ、ここに置くんですか? 女は眉を顰めそう聞いた。 どうにもこの香りが好きでは無いようだ。 |
|
| おや、お嫌いですか。では自室の方に致しましょうかね。 そこまで好き嫌いが別れるものでは無いと思っていましたが あなたにその様な反応をされるなら、 他の二人が嫌でないかも聞かねばなりませんね。 |
|
| そんなチマチマ使うんだったら 誰かにあげた方が早くないですか? 匂いに慣れたのか、女はいつもの調子を戻しそう言った。 |
|
いただきものを人に渡すというのは失礼ですからね。 振舞うにも私が飲まないのであれば話にもなりませんし。 ブランデーやウォッカの方が良いのですが、手を加えて化粧水や香水にする事もできますよ。後は塗り薬でも作りますかねえ。 とりあえず日持ちはしますから心配する程でも無いと思いますよ。 本格的に料理ができる人が居ればもう少し減りそうではありますけれどね。 |
|
| そういう所は無駄に気遣いますよねアナタ。 商人なんですし素知らぬ顔して売っても大丈夫なんじゃないですか? |
|
| いつ何処で誰が見ているやも分かりませんからね。 売った事で買い手に不幸があるのも御免ですし、 こちらで消費するのが一番ですよ。 では、私は自室の方に戻りますので。 男はそう言い返事も聞かずに天幕から出て行った。 |
|
| ……。 女は去る男を沈黙して見届けると 自分の用事を思い出し行動し始めるのであった。 |
切替1 カパッサ
| 日は変わり、目つきの鋭い男が天幕の前で不機嫌そうに佇んでいる。 傍らには弓を携えており、どうやら見張りをしている様である。 |
閉め会話1:天幕前 カパッサ クラリエント
| ……クラリエントの事か? 男は帰り行く来客を目で追う事もそこそこに 顔を顰めながらそう独りごちた。 |
|
| 程なくして天幕から出てきた男が辺りを見回すと やや落胆した様子で元居た男に話しかけた。 ああ、遅かったですか。 すみません。手が離せなかったもので。 |
|
| 誰だか知らないが、名前も言わずに帰ったぞ。 男は相変わらず鋭い目つきで金髪の男を見ると 悪びれも無さそうに淡々とそう告げた。 |
|
| 荒げられた声が聞こえたので何となく想像は付きますが。 あなた、ろくな会話をしなかったのでは無いですか? |
|
| 声が聞こえたんならお前も声を出せば良かったんじゃないのか。 文句があるなら俺を見張りから外せばいいだろう。 |
|
| ……成る程、敵襲と来客とどちらを危惧するかという事ですか。 そうですね。この様な事が繰り返されてもいけませんし、検討致しましょう。 長時間ご苦労様です。どうぞ中へ。 |
|
| ああ。そうさせてもらう。 弓を携えた男はそう言うと 相手の目も見ずに一つの天幕へと入って行った。 |
|
| 残された方の男は一人溜息をつくと 天幕から顔を背け呆れる様にこう言うのであった。 あれでマシになった方だというのですから、末恐ろしいものです。 もう少し、考えねばなりませんか……。 |
切替2 チシミア
| 日は変わり、天幕の外にバンダナをつけた女が地面に座り込んでいる。 レイピアの手入れをしている様だが既に十分済んでおり、 傍から見ても明らかに退屈そうである。 |
反映会話7:イベント参加/採集 シリール チシミア
| 日は変わり、一つの天幕の中に本を読む女の姿がある。 側には白いカップが一つあり、もう少しで底が見えそうになっている。 |
|
| そこへバンダナをつけた女がやってくると 元いた女を見て意外そうに声をかけた。 珍しいですね。こっちに居るなんて。 |
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| 声をかけられた女は顔を上げ相手を確認するとすぐに視線を本へと戻し 表情を変えることもなく口を開いた。 見張りをしている内にテリトリーを奪われたわ。 まだ寝てるんじゃないかしら。 |
|
| ああ。お疲れ様です。 説明を受け、女は納得したように声を上げると 取って付けたように労いの言葉をかけた。 かなり断片的な話であったが、事情は飲み込めたらしい。 |
|
| そっちは何か収穫でもあったのかしら。 | |
| え?収穫、ですか? | |
| 久々に意気込んでいた様に見えたけれど、 気のせいだったかしら。 |
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| ……私、そんなに意気込んでました? | |
| ローブの女は問いを受けると再び顔を上げ相手を見た。 逆だわ。無自覚だったのね。 あなた、こっちに来てから随分としぼんでいたわよ。 私が言えた事では無いけれど。 |
|
| そ、そう……ですか。 女は尚も驚いたままかろうじてそれだけ返した。 その対象がその事実に対してなのか 相手がそう言ったことに対してなのかは分からないが よほど想定していなかった返答だった様である。 |
|
| 何かを見つけられたなら良かったわね。 視線を落としさして興味もなさげに女はそう言うと どうやらそれ以上告げることは無いらしく、 本を読むことに集中をはじめた。 |
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| |
バンダナの女は相手を眺めながらその場で呆けていたが、 しばらくすると何事も無かった様に自分の行動をしはじめるのであった。 |
16期初期会話:ラックとクラリエント 灰色の男
| これから再生される物語は、ここにいる彼らに繋がる さして遠くない過去の会話である。 |
|
| 天幕の外に剣を携えた男が何をするでも無く一人佇んでいる。 その表情は真顔であったが、何かを思案している様にも見えた。 |
|
| 天幕の中から別の男が出てくると、佇む男を見つけ声をかけた。 ラック、長時間の見張りご苦労様です。 そろそろ交代になりますので中にどうぞ。 |
|
| 茶髪の男は投げかけられた言葉に対しての反応は見せず 地面を見つめたまま訝しげに口を開いた。 なあ。今、灰色の男を見なかったか? |
|
| いえ、私は先程まで天幕に居たので見てませんが。 どなたか来客がいらっしゃったのですか? |
|
| いや、ここでじゃないんだ。 夢なのか分からないが、さっきまで灰色の男と会っていた。 |
|
| 目の前の仲間の発言に金髪の男は怪訝な顔をすると 思案するように利き手を口元に添えた。 まさか寝ていたわけではないのですよね? 白昼夢でも見ていたのですか? |
|
| 白昼夢なのか、アレは。 男はようやく会話の相手と視線を合わせると、 驚きも焦りも滲ませない声で淡々とそう言った。 |
|
| あなたが白昼夢、ですか。 ……何だかいつしかと立場が逆ですね。 |
|
| いつしか? 似たような事が前にあったのか? |
|
え……。 男は驚いた表情を見せるとすぐに眼を逸らし、焦りの色を浮べた。 口をついて出たもののどうやら自身にも思い当たる節が無いらしく、 途端に余裕の無い表情に変わっていく。 |
|
| いつ、でしょう。 確かにあったと思ったのですが、はっきりとは……。 変、ですね……。 |
|
| 悪い。混乱させるつもりは無かったんだ。忘れてくれ。 茶髪の男は動揺し始めた目の前の人物に対しての心配も見せず 軽い出来事であったかの様にそう言った。 |
|
| いえ……。 金髪の男は辛うじてそう返答したものの表情を変える事は無く、 地面を見つめたまま押し黙ってしまった。 |
|
| 見張りは俺が続けておくか? | |
| ……ええ。すみません。 少し、休んだ方が良いようです。 |
|
| ああ。 何かあったら声を掛けてくれ。 |
|
| 金髪の男は茶髪の男に背を向け天幕へと歩くも 数歩した所で歩みを止めた。 ……。あなたが言うのなら……。 事実、なのかもしれません。 |
|
| ……。 男はゆっくりと相手の背を見ると、 視線を戻し淡々と返答する。 クラリエントがそう思うんなら、そうなんだろう。 俺はただそんな夢を見たような気がしただけだからな。 |
|
| ええ……。 すみませんが、宜しくお願いしますよ。 金髪の男は先程より幾許か落ち着きを取り戻しながらそう言うと、 元の天幕へと戻って行った。 |
|
| そうして残された男はまた遠くを見つめたが、 先程のような悩ましげな雰囲気を発する事は無かった。 |
過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘2
| 帰れ。俺は冒険者になる気は無い。 | |
| ……。 | |
| 山にほど近い寂れた小屋の前で チシミアは目の前の男の発言に言葉を詰まらせていた。 時刻は昼を過ぎ、地面を太陽が照らしている。 |
|
| 横に居たラックに対し、チシミアが小声で話しかける。 ちょっと何なんですかこの人。取り付く島も無いじゃないですか。 |
|
| ああ。こうなるとは思ったが。 焦る女とは対照的に、男はあっけらかんとそう返した。 |
|
| ……。 女はラックに対して心底呆れた様な眼差しを向けた。 どうやらここまで勝算が薄いとは思っていなかった様である。 |
|
| 用がそれだけなら帰ってくれ。 目つきの鋭い男はそう言うと、 二人の横をすり抜け山へと消えていった。 |
|
| あ……。 女は去っていく男を呼び止めも追いかけもせず、 ただその場に立ち尽くし見送ることしかできなかった。 |
|
| どうする。諦めて帰るか? | |
| あの人……カパッサ、でしたっけ。 あんな無愛想でも弓の実力はあるのよね? |
|
| ああ。それは間違いないな。 | |
| ならここで引き下がるのは惜しいし、 何とかして仲間に引き入れないと。 |
|
| 女はそう言うとその場に立ち尽くしたまま思案しはじめた。 考えてきた案が通らなかった為、他の策を練ろうとしているらしい。 |
|
| ……うちの宿の近くに移動式でないサーカスがあったわよね? | |
| ああ、そういえばあるな。行った事は無いが。 それがどうかしたか? |
|
| ひとまず今日は帰ってそっちと掛け合ってみましょ。 強引な誘いは印象を悪くするだけだし、 これ以上ここに居ても得るものはないわ。 |
|
| そうか。分かった。 | |
| 二人は小屋を後にしその後サーカスに赴いたのだが それはまた、別の話である。 |
過去話:チシミアとラックと 仲間の勧誘1
| これから再生されるのは、チシミアとラックがパーティを組んでから 三週間ほど経った頃の物語である。 |
|
| ううん……。 やっぱりパーティとしての新メンバーを入れないと どうにも割に合わない……。 |
|
| いつもの宿のテーブルでチシミアは硬貨を見つめながらそう言った。 テーブルには硬貨がいくつかあり、依頼の報酬を分け終えた後のようである。 外はまだ明るく、周囲で談笑している冒険者も多い。 |
|
| 助っ人とメンバーとでそんなに差があるのか? 能力は申し分無いと思うが。 |
|
| 報酬の分け方が変わるの。 こっちのお願いで他から引き抜いてるから 多めに見積もらないといけないじゃない。 それに依頼で助っ人に何かあったらその責任は私達に降りかかるのよ? |
|
| 頼んでるのは後ろで戦う魔法使いやヒーラーだろ? 大きな依頼でも無い限りそこまでの危険性は無いんじゃないのか? |
|
| だから大きな依頼が受けられないんじゃない! メンバーをもっと増やしていい依頼を受けたいのに 相変わらず部屋は空きが出ないし、宿を動く訳にもいかないし……。 |
|
| 思ったんだが。別に一人一部屋じゃなくても良くないか? 俺は別に床で寝るので構わないし、そうしてる所もあるだろ。 そういう条件で良いって奴を誘えばいいんじゃないのか。 |
|
| 簡単に言うわね。アテでもあるの? 他の宿からの引き抜きはそう上手くいかないわよ? |
|
| アテか……。 そう言い、男は考え込むように口を閉ざした。 |
|
| この際私達みたいな前衛じゃなければ何でもいいわ。 シーフでもアーチャーでも。欲を言えば回復もできる人がいいけど。 |
|
| ああ、弓か。 そう言えば狩人だったなあいつ。 |
|
| 何、居るの!?この近く!?期待はできる!? | |
| 期待できるかは分からないが、俺に冒険者を勧めた奴だ。 変わってなければ正規の職にはついていないハズだな。 半日もあれば着く。 |
|
| 半日……。今からじゃ遅くなるわね。 じゃあ明日朝一番で行きましょう。 |
|
| ああ、俺は構わないが。 | |
| じゃあ決まりね。 上手い誘い文句を考えておかなきゃ。 女はそう言うと硬貨をしまいウキウキとその場を後にした。 |
|
| ……。 相も変わらず無表情の男が女を見送りながら何を思っていたのかは 傍から伺い知る事はできそうになかった。 |
過去話:チシミアとラック 出会い
| これから再生されるのは、チシミアが男と別れてから 十数ヶ月経った頃に始まる物語である。 |
|
| 親父さああん。私もうどおしたらいいのおお。 女が宿のカウンターに突っ伏している。 手に握られたグラスから察するに、既にできあがっている様である。 |
|
| おまえな、そんなんだから 他のテーブルから追い出されるんだぞ。 宿の亭主と見られる男は、諭すようにそう言った。 |
|
| 見ると周りのテーブルでは他の冒険者がドンチャン騒ぎをしており 従業員と見られる女性が料理を運ぶ姿も見られる。 夜も更け、依頼遂行祝いの宴会をしているようだ。 |
|
| 私だけパーティに入れてもらえない……。 剣も覚えた、知識も増えたのに。 なのに何で私はパーティに入れてもらえないのお!? |
|
| 依頼には誘ってもらえてるじゃないか。 お前だってそれで食っていけてるだろう。 |
|
| 穴埋めで入れられるだけでパーティに入れてもらえないの! 私はパーティが欲しいのよ!仲間が欲しいの! |
|
| 今は宿の仲間で満足しておけ。 どこもお前が入る隙間なんぞ無いんだよ。 |
|
| うぅ、うぅう……。 女は涙を浮べ口を噤むと、グラスに残った酒をちびちびと飲み始めた。 |
|
| |
二人が会話を終えると、剣を携えた一人の男が入って来た。 焦っていない所を見るに、依頼主ではなさそうである。 |
| なんだ、見かけない顔だな。よその冒険者か? | |
| いや、冒険者になりにきたんだが。 ここの宿は空いているか? |
|
| ああ、丁度昨日一部屋空いたな。 しかし悪いがパーティの方に空きが無いんでな。 まあそれでもいいってんならいいが。どうする? |
|
| ああ、それで構わない。 ラック・トーデリだ。宜しく頼む。 |
|
| じゃあこいつにサインを……おっと、あっちに持っていってたんだったか。 悪いが少しこいつの相手でもして待っててくれ。 亭主は女にではなく来たばかりの男に対してそう言い、奥に消えていった。 |
|
| ……あんた、冒険者になるの? | |
| ああ。勧められたんでな。 | |
| 冒険者になる事を勧めるなんて、とんでもない人ね。 冒険者は最悪よ。私が保証するわ。 |
|
| そうなのか? じゃあ、あんたは何でやってるんだ。 |
|
| 借金返すまで離れられないのよ。滑稽でしょ。 しかもそれ私の借金じゃないの。意味分からない。 |
|
| そうなのか。それは災難だな。 男は同情や嘲笑と言った感情は乗せずに、ただそう言った。 |
|
| が、生憎酔った女はそうは受け取らなかった。 あんた、馬鹿にしてるの?馬鹿にしてるんでしょ! |
|
| 悪い、そんなつもりは無かったんだが。 激昂する女に驚きもせず、男は淡々と言葉を紡いだ。 |
|
| もうっ!どおおせ私は誰からもパーティに入れてもらえない 馬鹿で使えない滑稽な女よっ! |
|
| 自分でそこまで言うのか。 | |
| あんただってそう思ってんでしょ!馬鹿にしてんでしょ! | |
| ……ん? じゃああんたは誰とも組んでないのか? |
|
| だーかーらー! 私は一人なのよ!ハブりなの! どうせ誰も相手にしてくれないんですよーだ! |
|
| あんた名前は? | |
| チシミアよ。何?仲間になる気にでもなったの? | |
| ああ。あんたが良ければだが。 | |
| と、そこで亭主が戻ってきた。歩調は遅く、特に急いで来た様子もない。 悪い悪い、持ってきたぞ。 これにサインしてくれ。 |
|
| はあああああああ!? あんた正気なの!? |
|
| ……なんだ、何があったんだ? | |
| 駄目か。 | |
| いっ、良いに決まってんじゃない……! | |
| 何だ、酔っ払いの戯言か? | |
| パーティを組む事にした。 | |
| パーティ!パーティですって!私がパーティ! | |
| お前、よくこの状態でこいつを仲間にしようと思ったな……。 | |
| 何か問題があるのか? | |
| いや、まあ悪くは無いが……。 酔いの席での決め事なんざ、嘘みたいなもんさ。 明日になってからもう一度確認するんだな。 |
|
| 分かった。 | |
| パーティ!パーティ!私がパーティ! | |
| 翌朝我に返ったチシミアとラックの長きに渡るやり取りがあったのだが それはまた、別の話である。 |
過去話:チシミア 唐突な別れ
| これから再生されるのは、ここにいる彼らが飛ばされる前の 遥か昔の物語である。 |
|
| ちょっと!どういう事!? | |
| どうもこうもねえよ。離せ。 | |
| ……。 | |
|
宿から出ようとしている男を女が必死に止めており、 |
|
| ねえ!嘘でしょう!? 何で私を置いて出て行こうとしてるの!? |
|
| お前が邪魔になったからに決まってんだろうが。 | |
| ね、ねえ。私何かした? 昨日まであんなに優しかったじゃない。 |
|
| もうオマエとの恋人ごっこには飽き飽きなんだよ。 つうか、元からタイプじゃねえし。 |
|
| 恋人……「ごっこ」? | |
| 交渉とか値切りとかちょっと使えるから置いといてやろうかと思ったのに 一向に武器を握る気配はねーわ結婚の話出すわもうウンザリだよ。 |
|
| ちょ、ちょっと待って!結婚を急かしたつもりは無いわ! いつかそうなったら良いってだけの話じゃない! |
|
| 俺はそうなりたいとは思ってないんだよ。 つうか定住して結婚ってオマエ冒険者なめてんだろ? 定住できるんだったら冒険者なんて底辺とっくにやめてるっつうの。 |
|
| あ、あなたの機嫌を損ねたのなら悪かったわ。 何でも言う事聞くし武器だって使えるようになるから! だから置いていくなんて酷い事はしないで!お願いよ! |
|
| オマエほんと人の話聞かねえな。タイプじゃねえっつっただろ。 俺はもう他の女に乗り換えたいんだよ。オマエは用済み。 つか俺から出て行くんだからちったあ有り難く思えよ。 |
|
| よっ……! じゃ、じゃあ今までのは全部嘘だったって言うの!? |
|
| 当たり前だろオマエバカか? 暮らしに不自由してねえのに冒険者と駆け落ちするようなバカと 一生を添い遂げたいと思う訳ねえだろ。 対した美人でもねーし胸もねーしよ。 |
|
| な、なっ……!? 女はわなわなと震えはじめた。 釣りあがる眉から察するに、それは怒りからくるもののようである。 |
|
| あ、あなただって対したものしてないじゃない! 大体あなたがあんな風に声を掛けてこなければ 駆け落ちなんてしなかったわよ! 私勘当されてるのよ!?この先どうしてくれるの! |
|
| 駆け落ちまでするなんて普通思わねーだろ。滑稽だな。 つうか、俺への恋が冷めたんならとっとと離してくんねえか。 それともまだ俺と関係を続けたいっつうのか? |
|
| だれがあんたみたいな最低な男なんかと! もう出て行って!! |
|
| あーあーそうかいそうかい。 じゃせいぜいこの先頑張るんだな。 そう言い、男はイラついた様子で宿を後にした。 |
|
| ……はあっもう何なの!親父さん、昼食ください! 男を見送った女は怒りが収まらぬ様子でカウンター席に座りそう言った。 |
|
| そして事を静観していた宿の亭主は 女に同情するようにこう言うのである。 あいつのツケは、お前が払うんだな。 宿代も大分滞納してたしなあ。ま、頑張るんだな。 |
|
| ……は? ……はああああ!? |
|
| そこから女は稼ぐために武器を習得し幾度となく戦闘をこなすのだが それはまた、別の話である。 |
15期:切替・閉め会話
切替 シリール
閉め会話1:天幕内/もてなし後 チシミア クラリエント
| ……。 天幕の外でローブを着た女が椅子に座り本を読んでいる。 分厚い本を読むその様子はどこか気だるげである。 |
閉め会話1:天幕内/もてなし後 チシミア クラリエント
| 残された二人が去るのを見届けると、 女の方がいぶかしげに口を開いた。 あの差し入れ、まさか毒見で私に最初に食べさせたんですか? |
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| おやおや、人聞きが悪いですね。 確かに先日いの一番にあなたに薦めはしましたが、それは善意からくるものですよ。 お疲れでしょうからどうぞ と言ったでしょう?仲間の言葉が信じられませんか? |
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| あなたの言葉だから信じられないんです。 一時でもあなたに感謝の気持ちを持った私が間違いでした。 今度からはあなたが 先に食べてくださいね。 女は語気を強め嫌みたらしくそう言うと、 冷える屋外へと足早に消えていった。 |
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| ……さて、いつまで覚えていることやら。見物ですね。 男は左程興味も無さそうに独りごちると 消え行く焚き火の傍で片付けを始めるのであった。 |
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| 日は変わり、天幕の外には誰の姿も見えない。 別段何かをしていた様子というものも無く、 小さな木の椅子が端に寂しく置かれているのみである。 |
プロフィール
HN:
34センチ
性別:
非公開
自己紹介:
AUC S鯖サイド:34cm
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